まずは論点を明確にする

何を伝えたいのか、必ず論点を整理する――アウトプット実践のヒント③

長い時間、聞き役にさせられた挙げ句、結局何を言いたいのかさっぱりわからなかったときほど、脱力感に襲われることはありません。

頭のなかでの思考段階では、取りとめなく次から次へ考えが連鎖していきます。それは、書き言葉でもなければ話し言葉でもない。言わば流動的な状態です。

この流動的な思考を、どう人に伝える形に整えるか。ここが非常に大事なポイントになってきます。

もっとも重要なポイントは論点を明確にすること。これに尽きます。

ひとりで考えごとをしていると、ときどき「こんなことを考えつく自分はすごいんじゃないか」と悦に入ることがあります。

すると、生まれたてホヤホヤの考えを、すぐにそのまま人に話したくなる。こんなこと、みなさんにもあると思います。

しかし、書き言葉化されていない頭の中身、話し言葉化されていない頭の中身。いずれも、論点が未整理という問題を抱えています。

そういうときは、人に話す前にメモ書きにして、客観的に思考の産物を眺めてみるというのが、手軽でいい方法です。

ただし書き言葉化すると、前項で指摘した難しい言葉を使いたくなるクセが頭をもたげてくるので、ここでもあくまでも平易な言葉でメモするということにしてください。

考えが浮かんでも少し時間を置き、もう一度見つめ直す

思考を文字化したときに着目してほしいのは、自分の話の論点が明確になっているかどうかという点です。論点がいくつも混ざっていたり、視点が定まっていなかったりということはないか、チェックしてみるといいでしょう。

論点は、アウトプットの形式を問わず、話を支える柱ということを意識して、大切にしてほしいと思います。

もうひとつの方法としては、考えが浮かんでからアウトプットするまでに、少し時間を置くというやり方です。思考の産物を寝かして熟成させると言ってもいいかもしれません。

わたしも含めものを書くことを職業としている人は、スケジュールなどが許す限り、この熟成期間中に、もう一度冷静に自分の考えを見つめ直すという段階を踏みます。すると、さらに思考が進化したり、洗練されたりということが起きます。

アウトプット重視の生き方に慣れないうちは、うまくできないこともあるでしょう。しかし、流動的で一見まとまりのない思考の産物を人に伝わる形に近づける作業は、脳の活性化にも大いに貢献します。

和田秀樹『60歳からは勉強するのをやめなさい』(SBクリエイティブ)
和田秀樹『60歳からは勉強するのをやめなさい』(SBクリエイティブ)

あるいは、それに自信がないうちは、友だちなどにゆるくアウトプットし、モニターしてもらい、よくわかるかどうかを率直に言ってもらうのもいいでしょう。

どんな話をするにしても論点重視は必須事項。

こうしたアウトプットトレーニングを積んでいくと、まわりからも「あの人の話はいつも理解しやすくて面白い」と評価され、好感度が上がっていくはずです。

効果的に人に伝えることの醍醐味がわかってくると、さらに人との交流が楽しくなること請け合いです。

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