手抜き願望が大きな発展につながることもある

たとえば、こんなものはどうでしょうか。キッチンの冷蔵庫はうっかりしていると、いつ買ったものかわからない食材や、いつ開封したのかわからず、ふたが固まってしまった瓶詰調味料などがいくつも増えてしまいます。

それなら購入した食材を収納する際に、冷蔵庫自体が食材についているコードを読み取って購入日を記録したり、開封日を記録して液晶に表示する。これならお金も食材も無駄にすることなく、使いきることができるようになるかもしれません。

さらに発展的に考えて、遠い土地で独り暮らしをする老親宅の冷蔵庫と子世帯の端末とでデータを共有し、食材購入サポートや健康管理につなげるということもあり得るかもしれません。

あるいは、スマホ・ガラケー一体型端末。いつもスマホを使っていて思うのは、電話やメール機能の使い勝手は、いわゆるガラケーのほうがいい。何でもスマホ1台に詰め込むから、トラブルの原因になるのではないか。

大事なときに、本来の機能である通話やメールがうまくできないことは誰もが経験したことがあるでしょう。

スマートフォンを見て頭に疑問符を浮かべるビジネスマン
写真=iStock.com/metamorworks
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そんなところからあれこれ考え始め、オモテ面はスマホ、ウラ面はガラケーのような一体型のものを誰かつくってくれないかなぁというところに行きついたのですが、いかがでしょうか。仲間内では結構、受けがいいアイデアなのですが。

いま例に挙げた「あったらいいな〜」は、一見すると、手抜きの願望とか荒唐無稽な空想に思えるかもしれません。

しかし、思考を発展させるためには、むしろ手抜き願望でも何でもいいから、とにかく考えてみるという姿勢をバカにしないことです。

のび太とドラえもん、AI時代に成功するのはどっち?

『ドラえもん』のなかで、のび太はつねに「こんなのあったらいいな〜」「この難題を切り抜けるために、あんなのあったらいいな〜」と考えています。つまりのび太は問題発見者であり、要求をドラえもんに発注するクライアント。

対するドラえもんは、要求に応え、問題解決を担う技術者という位置づけになります。

さて、これからの時代、成功するのはのび太型とドラえもん型、どちらでしょうか。ぱっと見は、四次元ポケットから次々に品を出す、ドラえもんのように思えるかもしれません。

しかし、優位に立つのはのび太型です。

ドラえもんは言わば「あなたの夢、叶えます」を生業にしているわけですが、そもそも「あなたの夢」がなければ失職してしまう。

このことからもわかるように、ものごとを生み出す源泉となる「わたしの夢」を見出せるかどうか、つまり問題発見できるかどうかは大きな問題です。

かつては日本は技術大国を名乗り、技術者視点でものを考える国でした。ですから他国より技術力は優っていましたが、発想力では劣るということがよくありました。

あるいは、仮にいくらユニークな発想をしても、現代に比べれば実現する技術がまだ乏しく、結局、既存の技術で実現可能な発想にとどまることも多かったのです。