当選するつもりがない炎上商法の候補者たち

7月7日、東京都知事選挙の投開票があり、小池百合子都知事の3選が決まった。ダークホース的な存在だった石丸伸二・安芸高田市前市長は勢い及ばず、1位と約126万票差の2位。全国的な知名度の蓮舫氏は3位と、蓋を開けてみれば現職の圧勝である。

この結果に私は何の期待も抱いていない。誰が選ばれようと、都知事選は茶番劇にすぎないからだ。

掲示板に貼り出された都知事選・選挙ポスター。
掲示板に貼り出された都知事選・選挙ポスター。

今回まず呆れたのはポスター掲示板だ。「NHKから国民を守る党」は関係団体も含めて24人を立候補させ、ポスター枠24枚分を確保。そこにオリジナルポスターを貼って何かPRしたい人に向け、団体への寄付の形を借りて実質的に販売していた。

当選ではなく目立つことを目的に立候補する泡沫候補は、昔からいた。ただ、都知事選の立候補には供託金が300万円かかり、有効投票総数の10分の1以上を獲得できなければ没収。泡沫候補の立候補は、お金を払って政見放送で自分の言いたいことを言って溜飲を下げる、小金持ちの道楽だった。

ところがSNSや動画配信サイトの普及で、目立って動画閲覧回数を増やせば稼げる時代になった。その結果、選挙への立候補が供託金を没収されてもそれ以上に稼げるビジネスと化してしまった。今回の都知事選は、その現象が顕著に表れた選挙だった。

迷惑系YouTuberのような候補を遠ざける対策法は何か。供託金をグンと上げてハードルを高くするのも選択肢の一つだが、泡沫候補の中にも真面目に草の根で政治活動している人はいる。若い人の政治参加を促すという点でも、供託金の引き上げは難しい。

今の時代に合ったものにするためにはまず金のかかるポスター掲示板を廃止し、すべてサイバーに移行すべきだ。政見放送も地上波はやめ、インターネットで常時見られる状態にすればいい。

物理的に限りがあるポスター掲示板と違い、いつでもどこでも見られる状態になれば、かえって目立たなくなる。またネットは自発的に閲覧するので、本当に政治に関心のある人しか注意を払わなくなる。迷惑系YouTuberのように目立ってナンボの立候補者は、ROI(投資利益率)が下がるから、大人しくなるに違いない。