東京都知事選の候補者ポスターが話題になっている。弁護士の堀新さんは「選挙ポスターの本来の目的を逸脱したり、その機能が果たせないものの自由までも無制限に保障すべきではない。ただ、今回の騒動を受け、過度な規制を行うべきではない」という――。
「選挙ポスター」が法律に触れるケース
東京都知事選挙(2024年6月20日告示、7月7日投開票)では、56人という大量の立候補者のみならず、ある候補が掲示した全裸に近い女性の写真が大きく使われたポスターの是非や、大量の候補者を出してポスター掲示場の枠の“販売”を行っている政治団体「NHKから国民を守る党」(以下N国党)の行為などが話題になっています。
これらはインパクトが強いため、人々の耳目を引くと同時に「選挙制度が揺らいでいる」「表現の自由との兼ね合いはどうなるのか」などとより大きな問題につなげて語ってしまいがちですが、それ以上に必要なのは、選挙ポスターが何のために掲示されるのかという原点に返ることです。
自治体が用意するポスター掲示場の目的は、あくまでも「公職に就きたいと考え立候補する人間を有権者が選ぶために、その情報を通行人に知らせる」ことにあります。
もちろん、自身の政治信条や政策を訴え、有権者に選んでもらうためにさまざまな表現を行うという面はありますが、目的はあくまでも「公職に就く人間として、自分を選んでもらいたい」と考える人間が告知のためにポスターを貼る場所である、という点は揺るぎないものです。
その意味で、公設の掲示場は、いくら政治信条の自由や表現の自由があるといっても、あくまでその設置の本来の目的のために使うことが前提になっているということを考える必要があります。
現時点でも、あるポスターの内容が公職選挙法ではなく、別の法律に抵触するケースがあります。