現時点では公職選挙法の想定外だが

一概に「選挙ポスター問題」ととらえられていますが、「ほぼ全裸ポスター」のようにポスター自体の内容の問題と、N国が掲示場の枠を“販売”したことで発生した問題は分けて考える必要があります。

N国党が“販売”した枠に貼られた一部のポスターに風俗店の店名が記載されたものがあり、これは風営法違反に当たる疑いがある、とのことで警視庁が警告、これを受けてN国がポスターを貼り替えることになりました。

今回は風俗店の店名が書かれていたことで風営法での警告になりましたが、すでに選挙公報や政見放送での営業宣伝(店や商品の広告)については公選法235条の3第2項によって禁止されています。

過去に選挙公報や政見放送で営業宣伝を行った人がいたからこそこうした条文ができたという経緯を考えると、この条文に「ポスター」も加えることで、今後はこうしたポスターの商業利用は規制できるようになるでしょう。

なお、先ほどからポスター掲示枠の“販売”と述べていますが、東京都選挙管理委員会がN国党に対して許可しているポスター掲示場の枠を使える地位そのものを他人に売って移転させることは実際には不可能です。

都庁
写真=iStock.com/nyiragongo
※写真はイメージです

あくまでも掲示場の使用者はN国党とその候補者のままであり、N国党のポスターを別の人が代わりに作成してN国党の区画に貼る行為を、金銭支払と引き換えに承諾しているにすぎません。

そのため、風営法違反で警告されたN国党の立花党首が掲示を取りやめた例のように、張り出したポスターに問題があればその責任はN国党とその候補者が負うことになります。

ポスターの責任はN国党にある

掲示場に貼るポスターには、掲示責任者、印刷者の氏名(法人の場合は名称)、住所を記載しなければなりません。N国党が掲示を許可したポスターの中には掲示責任者に関する記載がないものもあるようですが、これは公選法第144条5項違反になります(違反者は2年以下の懲役か50万円以下の罰金)。

N国党の立花党首は、ポスターを貼る・剥がすのはN国党の責任であり、自身が認めなければいずれもできないと会見で述べていますが、貼られたポスターに問題がある場合の責任も当然、N国党とその候補に及びます。そのため、枠を“販売”しているといっても購入者に好き勝手やらせていいわけではありません。

ある掲示場では、N党の候補者のスペースを使って、複数のポスターの文言を続けて読むと一つの文章になるような掲示を行っているものがありましたが、これは「全体を一枚のポスターととらえ、規定の大きさを超えるものを貼り出している」とみなされる可能性、つまり公選法第144条4項(長さ42センチメートル、幅30センチメートルを超えてはならない)に違反する可能性があったためか、警視庁がN国党の立花孝志党首本人に対して警告をしていた。