「あんな親だったのに、よくがんばってきた」
また、ヒーローショーで叱られた映像がトラウマのように残っているということだったので、それを吹き飛ばす「ビジュアル・スイッシュ」というワークも行いました。
まず、怒っている母の顔を1枚の写真とイメージして、手の甲に貼り付けます。手のひらには見るとワクワクする、うれしくなる、リラックスできるなど、自分をポジティブな気持ちにさせてくれる画像を写真とイメージして貼り付けます。Aさんは見ると癒されるという海の画像を選びました。そして、手の甲に顔を近づけて、シュッと息を吹きかけて母の画像を宇宙の彼方に飛ばしたら、今度は手を返して好きな海の画像が天から降りてくるのをイメージしながら自分に近づける、という動作をくり返します。
何度かカウンセリングに通ううちに、少し気持ちが楽になり、うつ病の薬を減らすことができたAさん。最後は「最近は自分の気持ちを少し友人に伝えられるようになりました」という報告を聞いて、カウンセリングは終了しました。
自己肯定感、自己効力感は人が幸せに生きるための基盤です。もし、Aさんのように親の顔色をうかがいながら育ち、自己肯定感が低いまま大人になってしまったのなら、まずは自分で自分を思いやる、セルフコンパッションを大切にしてほしいです。「あんな親だったのに、自分はよくがんばってきた」と労ってあげてください。
状況が許すのであれば、親に「子どもの頃、あんなふうに言われたのは嫌だったんだよ」と話してみる方法もあります。謝ってくる親もいれば、「そんなつもりじゃなかった」と言い訳してくる親、認めない親もいるかもしれません。でも、そうやって言えたことは、すごく大きなことであり、1つの区切りになるはずです。