不要な外郭団体を作るという税金の無駄遣い

この二つが役所内部からみた理由だが、これだけでは綺麗事にすぎるだろう。天下りには組織の影響力拡大を狙うという役所の意図もあるからだ。天下りが先か、影響力の拡大が先かは、卵と鶏くらいに微妙だが、霞が関や永田町の住人ほど影響力を及ぼすことに快感を感じる人種はいないのは確かだ。

その結果、独立行政法人や特殊法人、許認可権が及びやすい民間企業で天下りポストがどんどん出来上がっていく。これが天下りの弊害でもある。天下りポストを増やし、自分たちの影響が及ぶ組織を維持するために、本来は不要な外郭団体を作ることほど税金の無駄遣いはないだろう。自由競争の世界では、本来倒産すべき会社が役所の許認可でゾンビ企業として生きながらえることは、マーケットを歪めることにつながる。

実は、天下りの罪深いところは役所の雇用慣行が社会や経済全体に大きな影響を与えることにある。そのため、従来から天下りを規制すべき、いや、規制ではなく壊滅させるために抜本的な策を打つべきだという声が強かった。

ビジネスマン
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天下りへの規制がなかったわけではない

天下りは2007年の国家公務員法の改正で規制されるようになった。ただ、それまでも規制がなかったわけではない。

従来は、国家公務員法第103条により、職員は人事院の承認を得た場合を除いて、離職後2年間は、離職前5年間に在職していた国の機関または特定独立行政法人と密接な関係にある営利企業に再就職してはいけないとされていた。

狙いはシンプルで、官民癒着を警戒したということだ。これ自体は間違いではないし、離職後2年間というのは相応の長さでもあり、決して緩い規制というわけではない。ただ、この規制では抜け穴があまりにも多いことから、その有効性は疑問視されていた。人事院の承認が甘いことに加えて、最大の問題は営利企業(民間企業)だけが規制の対象となっていることだ。規制緩和などで中央官庁が民間企業への影響力を失うにしたがって、主な天下り先は非営利法人に移っていった。特殊法人、独立行政法人、公益法人などだが、こちらへの再就職に対する規制が皆無だったのだ。