62万台が対象となった三菱自動車の燃費不正問題

このような排ガス不正の問題が海外においてクローズアップされたことで、わが国においても同じような事案がないかが確認されるようになりました。まず国内において問題となったのが、三菱自動車の燃費不正です。

ここでは、特別調査委員会による報告書や私がこれまでに書いた論文も参考にしながら、少し経緯を押さえておきたいと思います。

三菱自動車は、もともと日産自動車(以下、日産)との合弁事業としてNMKVという株式会社を2011年6月に設立していました。NMKVは、三菱自動車と日産が共同出資することによって、新型軽自動車の商品企画やプロジェクトマネジメント(進拶管理)を行うことが目的でした。

ただし、あくまでNMKVは商品企画とプロジェクトマネジメントだけを行うため、実際に新型軽自動車の開発を行っていたのは三菱自動車でした。三菱自動車では、NMKVから業務委託を受けるかたちで、新型軽自動車を開発・製造していたのです。

三菱のeKシリーズはヒット商品だったが、日産の指摘が入る

それでは、どのような新型軽自動車が開発されたのでしょうか。

それらは、eKシリーズという車種になります。このeKシリーズは、三菱自動車によれば「excellent K-car」(優れた軽自動車)と「いい軽」を造るという意味がかけ合わされており、利用者にとってより乗り心地を良くし、価格も求めやすい軽自動車という意味がありました。

このシリーズは、いくつかの車種があり、それらは14年型eKワゴン、14年型eKスペース、15年型eKワゴン、15年型eKスペース、16年型eKワゴンなどがあります。このように、これまでに数多くのeK車種が生まれているのです。

このようにeKシリーズは、利用者にとって乗り心地が良く、同時に価格も求めやすいことから、人気車種になっていきました。

ところが、2015年秋に問題が発覚したのです。

日産が燃費を計測したところ、三菱自動車が実際に測定していた実測値と国土交通省へ届け出ている届出値が大きくかけ離れていたことが判明したのです。本来であれば、実測値と届出値は同じものでなければなりません。しかし、三菱自動車では実測値と届出値が違うということを、パートナーでもあった日産に指摘されたのです。

そこで三菱自動車においても社内調査を行ったところ、2016年4月の段階でeKワゴン、eKスペースと日産に供給しているディズ、ディズルークスという4車種において、型式指定審査を申請した際に燃費試験データを不正に操作していた事実が分かったのです。三菱自動車は、このことを「型式指定審査」をしている国土交通省へ報告しました。

燃費不正問題の調査状況を国交省に報告後、記者会見で謝罪する三菱自動車の相川哲郎社長、益子修会長ら=2016年5月、国交省
写真=共同通信社
燃費不正問題の調査状況を国交省に報告後、記者会見で謝罪する三菱自動車の相川哲郎社長、益子修会長ら=2016年5月、国交省