会計士の試験は司法試験と同じで会計知識を暗記することが多いので、いかに要領よくものを覚えるかが勉強だと思い込んでいる学生が多い。しかし本当に大事なのは、会計学の本質を理解して頭をよくすること。頭をよくすれば、枝葉末節の会計知識も体系的に理解できるようになるし、会計士の方には失礼な言い方ですが、会計士の試験ぐらいはわりと簡単にパスできるのです。

実力アップにとって大事なのは、知識を詰め込むことではなく、頭をよくすることです。2000ccのクルマも4000ccのクルマも時速100キロで走る分には問題ありませんが、長時間の高速クルージングでは自力の差が出る。坂道や山道を登るときにはやはり4000ccのほうが余力はあります。

頭をよくするというのは、クルマでいうとエンジンの排気量を大きくすることです。2000ccよりも4000ccのほうが楽に走れる。小さなエンジンをやたらにふかしても、実力がないからどこかで息切れします。

頭をよくするという言い方に語弊があれば、思考を磨く、論理的思考力を高めると言い換えてもいい。これはビジネスにとってきわめて重要な“実力”です。特に社会的地位が上がって管理職、経営幹部の立場になれば、難しい判断やデシジョンメーキングを迫られる。そこでは必ず論理的に深い思考ができるかどうかが問われます。

ところが毎日散歩していても急にはマラソンが走れないように、日頃から頭に負荷をかけて、筋力を高め、持久力を養わなければ、ホンモノの論理的思考力は身につきません。複雑な論理思考ができないと、複雑な事象に出くわしたときに「バカの壁」にぶち当たる。

一部の人は反省してそこから壁を乗り越えようと頑張る。しかし一部の人は自分が理解できないのは世の中が悪いと思い込んでしまう。自分の実力を高めたいとか、勉強しようという気持ちがなくなったら、これはもう末期的です。

※すべて雑誌掲載当時

小宮コンサルタンツ代表取締役 小宮一慶
経営コンサルタント。京都大学法学部卒。東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行、米国ダートマス大学経営大学院にてMBA取得。2005年から09年3月まで明治大学大学院会計専門職研究科特任教授。1996年より現職。『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』など数々のベストセラーをもつ。
(構成=小川 剛 撮影=小倉和徳)
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