消費社会研究家、マーケティング・アナリスト 三浦展

みうら・あつし●1958年、新潟県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、パルコ入社。マーケティング情報誌「月刊アクロス」編集長を経て、三菱総合研究所入社。99年、カルチャースタディーズ研究所設立。主著に『下流社会』(光文社新書)、『富裕層の財布』『日本溶解論』(ともにプレジデント社)ほか。

経済評論家、公認会計士 勝間和代

かつま・かずよ●慶應義塾大学商学部卒。早稲田大学ファイナンスMBA。最年少(当時)の19歳で会計士補の資格を取得。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー、JPモルガンを経て独立。内閣府男女共同参画会議議員。主著に『お金は銀行に預けるな』(光文社新書)、『効率が10倍アップする新・知的生産術』(ダイヤモンド社)ほか。

【勝間】『下流社会』より『下流社会 第2章』のほうが面白いのに、販売部数は『~第2章』のほうが少ないのはなぜでしょうね。

【三浦】大胆な仮説を提示したほうが売れるし、仮説を細かく検証したもののほうが売れないってことでしょう。それでいながら、仮説提示のための本と検証の本を混同した批判がされるところが困ったもので。本にすがる読者もレトルトパック的な情報しか求めなくなっている。素材から吟味して、これとこれを使ったら、こういう現象が説明できると解き明かす本ではなく、温めるだけで手軽に食べられる加工食品のような本というか。料理でいえば、スパイスから自分でカレーを作る「上流」か、普通にルーを買ってタマネギやニンジンを入れて作る「中流」か、レトルトカレーを温めるだけの「下流」かという違い。最近はレトルトカレーを温めないでかける人もいるらしいです(笑)。

【勝間】私たちもどうしても求められるままに、そういう加工食品の本を紹介するけれど、本当に読んでほしいのは加工食品の本ではなくて、もっと原材料ものなんです。マスメディアがなぜそれをやらないかというと、売れないからなんですね。原材料を理解してくれる知識層が少ないので、だったらもう少し食べやすいかたちに調理しないと――となる。

【三浦】知識として必要なことは、良いジャガイモの見分け方であって、「こっちのレトルトとあっちのレトルトは、どちらがおいしい?」なんて話は、本当はどうでもいいんだけどね。