だから「ザ・ベストテン」は伝説の番組になった
ほかにも前回書いたとんねるずの「タカさんぶち切れ事件」など伝説的出来事はまだまだあるのだが、このあたりでやめておこう。
こんな破天荒な番組がちゃんと成立したのは、黒柳徹子と久米宏という初代名MCコンビの力も大きかった。「ランキングに嘘をつかない」ことを条件に出演したという黒柳は、近藤真彦に「お母さん」と慕われるなど歌手に親身に寄り添った。久米はトークの達人である黒柳に一歩も引かず渡り合い、また時に山口百恵にデレデレになるなどしながら名人芸で番組を仕切った。
そしてなんといっても、これほどテレビ本来の生放送の醍醐味を味あわせてくれた番組もなかった。そこには、生だからこそ得られる究極のハラハラドキドキ感があった。
生放送は、見ている視聴者に同じ時代を生きているという高揚感をもたらす。そしてヒット曲も、その時代ならではの空気感を背景に生まれてくるものだ。その点、すぐれた音楽番組は、すぐれた報道番組の要素を持つ。なにも政治や経済だけがニュースではない。ヒット曲もまたひとつのニュースだ。
だから生放送で聞くヒット曲には、格別なものがある。しかも『ザ・ベストテン』の場合は、視聴者が参加できるレコード売り上げやリクエスト順位で決まる純粋なランキング方式。私たちは、「この時代に生きている」という実感をこれ以上ないほどに得ることができたのだ。