傲慢な部下を上手に叱る

【TECHNIQUE】相手を見極めて「斜めの関係」を使う
藤原和博氏

部下といっても、30人いれば、30人30様で性格も考え方もさまざま。1人1人を知ることが必要です。

まずは問題の部下を会社帰りに食事に誘い、15分以上かけて自分の口から来し方、行く末を語ってもらいましょう。どこで生まれ何をしてきて、何を目指しているのか。強気である理由や背景を知らないとマネジメントはできません。

強気にも種類がある。親から常に褒められてきたために自己評価が高いのであれば、強気をくじくことは難しいので、その強気をうまく利用するべきです。ポジティブシンキングの本を読みすぎて己のすべてを肯定しているのであれば、違う方向性の本を与えれば変化はすぐに起こるでしょう。部下が強気になった経緯を人生から探ってみるのです。

周囲の人の性格を把握することはコミュニケーションの基本。私が上司なら最初の2週間で部下にあらゆることをインタビューして、1人ひとりのキャラを掴むことを心がけます。和田中学校の校長をしていたときも、300人くらいまでは生徒の顔と名前を覚え各生徒の特性を掴むようにしていました。

大切なのは相手の頭の中にある世界観を見極めることです。人は皆、テレビゲームの主人公のように、自分の世界観の中で、そのルールに従って生きています。強気な人間ほど、その傾向は強い。

部下にとって何が格好いいことで何が成功なのか。“ゲーム”の構造とルールがわかれば動機付けが可能になります。昇進に価値を置かない部下に「出世できないぞ」と脅しても意味はありません。

強気な部下は、上司から問題点を指摘されると反発するかもしれません。上司を尊敬も信用もしていない可能性が大きいからです。そんなときは「斜めの関係」を利用します。上司から直接ではなく、他の課の尊敬する先輩や庶務の女性など、社内の立ち位置が仕事の上下関係と少し離れた人から部下に伝えてもらうのです。

部下の世界観を探るのは、部下の生き方のルールを把握することであると同時に、誰をリスペクトし、信用しているのかを知ることでもあるのです。

私がリクルートにいたとき、共感能力の高い秘書の女性に部下と飲みにいってもらい「こういうふうに思ってるみたいよ」とさりげなく注意してもらったことがあります。これが斜めの関係。親から言われると頭にくることでも先輩や叔父さんからだと素直に聞けるのと同じです。

強気な部下を注意するためには、まず強気である理由を知り、話が通る人に伝えてもらうのがいいでしょう。