競合他社と蜜月関係の相手から信頼を得る

【TECHNIQUE】カギは「プラットフォーム戦略思考」にあり
平野敦士カール氏

競合他社をA社、その蜜月関係にある相手をB社とすると、A社とB社には必ず何らかの問題があります。関係が近ければ近いほど、トラブルは発生するもの。自社としては、両社の間で発生している悩みやトラブルを解決するものを提供する発想を持つことが重要です。

このケースであれば、B社が何に悩んでいるかを調べたうえで、自社として何が提供できるのかを探っていくことです。

相手の欲しているものをうまく見つけて、自分たちの戦略にフィードバックしていく――。こうした考え方をプラットフォーム戦略思考と呼びます。これはwin-winの形でプラットフォームに複数のグループをのせ、一企業の枠を超えて周囲の人や企業も幸福にしていく事業のエコシステムを構築する思考です。

私は以前、NTTドコモiモード企画部アライアンス担当部長としておサイフケータイの普及を担当しました。最も苦労したのが、コンビニなどの小売店に対して、おサイフケータイに対応したシステムを導入してもらうことです。当初、「電子マネーを導入するとお客さんの決済が早くなります」と小売店側に持ちかけていたのですが、なかなか受け入れてもらえませんでした。

小売店の担当者にヒアリングしたところ、決済の早さより、むしろ売上単価や顧客数、顧客の来店頻度を上げたいと考えていることがわかりました。そこで、ケータイをマーケティングツールとして導入することによってどのような効果があがるかをシミュレーションし、小売店側を説得する戦略に転換しました。結果、次々に普及していったのです。

このケースではまったく新しいサービスだったので競合はいませんでしたが、競合がいる場合も同じです。自社のサービスが優れていることを強調しても、相手は聞いてくれません。相手の悩みを見つけ出し、それを解決するための提案を行う。これが王道です。

だからこそ人脈ネットワークが重要です。プロジェクトが成功するかどうかは、こちらの情熱や想いを相手の担当者とシェアできるか否かでしょう。その意味では「どの会社とやるか」より「誰とやるか」が重要です。同じ会社でも「あそこの部署に行ったらダメだ」ということがあります。相手企業の中で、誰がプロジェクトを動かす力を持っているのか。そこを見極める必要があります。