環境と経済の共存は可能なのか

そして今、渋沢栄一も予期していなかった新たな課題が現れました。

環境問題です。

栄一は、社会の平等を実現させ、持続させていくために、経済に道徳というアナログなものを取り入れようとしました。ただ、彼の時代にはまだ環境問題は表面化しておらず、無尽蔵な地球環境の中で、暮らしと経済活動のバランスを取ることさえできれば、より良い社会が実現すると考えていました。

しかし、現在、自然が有限であることに気づいた私たちは、日々の暮らしと経済活動に加えて、地球環境も加えた三者のバランスを見出すことが必要なフェーズに入ったと言えるでしょう。

渋沢寿一『森と算盤 地球と資本主義の未来地図』(大和書房)
渋沢寿一『森と算盤 地球と資本主義の未来地図』(大和書房)

これまでの経済活動も続けながら、自然と共生することは可能なのでしょうか。

渋沢栄一が論語(=道徳)と算盤(=経済)の両立を唱えたように、「森」=有限な地球と、「算盤」=経済を共存させることは可能なのでしょうか。

環境問題と渋沢栄一は、一見結びつかないように思えるかもしれません。しかし、自然を守り、次世代につなげていくことは、栄一が生涯を通して成し遂げようとした「公益の追求」につながるものだと考えています。

これは、資本主義やお金を否定する、ということではありません。

いまこそ渋沢栄一の合本主義を

資本主義を完全に否定するのではなく、資本主義の中で生活しながらも、それだけではない価値観を、この有限な地球の中で、自分たちでつくり上げていくということです。

自分たちの足元にある地域の価値を創造し、確認し合う。目の見える範囲の人と「心ののりしろ」を重ねていき、文化を積み上げていく。地域間を肉体的に横断していき、ときにはSNSも使いながら結びついていく。

このように、限界を迎えた地球環境の中では、経済ではなく「想い」をグローバル化することこそが、渋沢栄一が唱えた「合本主義」を実現することではないかと私は考えています。

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