アライメントの原則では、まず「結果ありき」で考え、明確な目標を掲げる。数多くある業務目標のうち、2つか3つの最重要目標を決め、メンバーの意識とエネルギーをそこに集中するのが目的である。それ以上の数では、メンバーの意識が集中しにくくなる。
例えば、市場でどのような結果を出すか、利害関係者をどう満足させるかなどが目標になる。その結果を明確に描き、自分たちの現時点での能力とどれほどギャップがあるかを測定することが、システム創造の前段階となる。
この効果性については、目標達成(P=production)と目標達成能力(PC=production capability)のバランスとして捉えられることから「P/PCバランス」と呼んでいる。
イソップ物語の「ガチョウと黄金の卵」は、端的にそのことを表しているのでご紹介しよう。
ある貧しい農夫が飼っていたガチョウの巣に黄金の卵を見つけ、市場へもっていくと純金の卵だとわかる。翌日も翌々日も同じことが起こり、やがて農夫は大金持ちになった。ところが、富が増すにつれて欲が出てせっかちになり、1日1個を待ちきれなくなる。そして、ガチョウを殺して腹の中にある黄金の卵をみんな取り出そうと考える。農夫がガチョウを殺し、腹を開くと空っぽだった。農夫は黄金の卵をたくさん手に入れることができなかったばかりか、1日1個を手に入れる手段さえも失ってしまったのである。
ここでいう黄金の卵が目標達成(P)であり、ガチョウが目標達成能力(PC)である(図14)。短期的な結果を得たければ、黄金の卵だけ見ていればよいが、長期にわたってよい結果を得るためには、ガチョウを養っていくことのほうが大切である。
リーダーは、チームの体制を整え、制度をつくり、人材を育てなければ、継続的に黄金の卵を手に入れることができない。上からは黄金の卵をもっと出せ、早く出せと求められる風潮の中、離職率の問題、メンタルヘルスの問題など、ガチョウの腹を割くことを強いられている。リーダーはこの状況から脱するためにも、目標に合ったシステムの創造を進める必要がある。
日常業務を進めながら、新たなシステムを創造するには多大なエネルギーを要する。しかし、システムの創造こそリーダーにしかできない仕事である。既存システムを見直し、現状で弱い部分、自分たちの目標に照らして重要な部分から着手していくことになる。