多くの企業でとりいれられている「クロスファンクショナルチーム=CFT」。利害が必ずしも一致しない個人を束ねるにはどうしたらよいのか。1つの答えは、「協力せざるをえない」状況をつくりだすことだ。
多様な個人を寄せ集めて1つのチームとして活動させるのは容易なことではない。強烈な縄張り意識、集団の業績ではなく個人を評価する報奨体系、買収や合併や事業再編で生まれた不信感など、障害は多い。だが、企業が革新的なアイデアを生み出す手段としてあらゆるレベルの部署横断的なチーム(CFT)にますます頼るようになっている今日、チームが提供できる新鮮な視点を活かすことは、かつてないほど重要になっている。
チーム活動の障害を克服し、普通はあまり協力することのない人々を1つのチームとして団結させるにはどうすればよいのだろう。「ぜひとも立ち向かってみたくなる魅力的な挑戦を彼らに与えればよい」と、経営コンサルタントのパトリック・マッケナとデビッド・マイスターは、『初めてリーダーとなる人のコーチング:チームの力を引き出し、個人を活かす23章』(日経BP社)で述べている。
チームの挑戦は、注目されるプロジェクト、プロセス改善運動、打ち負かすべき敵、「勝ち組」になるチャンスなど、さまざまな形をとりうる。厳しい時間枠のなかで気の遠くなるような任務をやり遂げねばならないという切羽詰まった状況とプレッシャーが、さらに別の種類の挑戦も突きつける。「焦眉の課題や厳しい期限を与えられたら、チームのメンバーには立ち止まったり、雲隠れしたり、人を非難したりしている時間的余裕はなくなる」と、マサチューセッツ州ニュートンの社内ブランド構築支援会社、インワード・ストラテジック・コンサルティングのCEOで創業者でもあるアラン・スタインメッツは言う。
チームの挑戦はさまざまな形をとりうるが、どのような形をとるにせよ、それらの挑戦には共通の目的がある。それは、自分個人より大きな何かに属したいという、ほとんどの社員が抱いている深奥の欲求を満たすことだ。「人間はこの感覚を他の何よりも重視する」と、『Creating We: Change I-Thinking to We-Thinking and Build a Healthy, Thriving Organization』(Platinum Press, 2005)の著者、ジュディス・グレイザーは断言する。
だが、挑戦を明示して、チームにそれに立ち向かう意欲を起こさせるためには、本当の意味での知恵が必要だ。「マネジャーはまず、社員が卓越した仕事をする手助けをすることに心底、関心を持っていなければならない」と、マイスターは言う。「それに加えて、個人活動からチーム活動への移行は知的なプロセスではなく感情的なものであることを理解する必要がある。チームとして協力しようという気持ちに徐々に導いていかなくてはいけないのだ」。
成果をあげているマネジャーたちが使っている手法を、次に紹介しよう。