そしてみんなで集まって車座になり、自分の紙をそれぞれ左隣の人に渡し、右隣の人から受け取った他人の紙に、その企画がもっと面白くなるようなアイデアを書き足していきます。グルグルとこの作業を続けると、紙が一周する頃にはアイデアが20個ほど加わり、かなり面白くなってきます。
他人のアイデアが付け加えられた紙が手元に集まったら、そこから1つを選び出すのではなく、複数の企画を最大限に合体して1つの企画をつくります。これをA案とすると、次にどうしてもA案に入りきらなかったアイデアでB案をつくる。最後に、全然使い物にならなそうだけどみんなには受けたアイデアをC案とします。この3つで企画会議に臨めばよい。
いろいろなアイデアをあきらめずに無理矢理合体させていくと、何か不自然なふくらみが出てきます。それが面白さや自分にしかできない個性の発揮につながります。
もし仲間がいない、あるいは仲間を集めている時間がなければ、この作業を1人でやります。そのためには、誰でも考えそうなつまらないアイデアを最低10個は出しましょう。で、それらを無理矢理足して1つの企画にまとめます。アイデアを出す時間は60分以内、合体させるのは15分以内。頭の瞬発力には限界があるので、長時間考えてもしんどいだけです。
企画を立てるのが下手な人は一番よい企画へいきなりたどりつこうとしますが、よい企画はたくさん数を出すなかから生まれるもの。頭のいい人は最高の企画をポンと出してくるように見えますが、彼らは頭のなかで考えて考えて考え抜いた企画のなかからたった1つをチョイスしているのです。
よい企画のために、つまらない企画をたくさん出さなければならないのは、美味しいものを食べたいのなら、数多くの店に行ってみるしかないのと同じことです。
岡田斗司夫
1958年生まれ。アニメ・ゲーム会社「ガイナックス」代表取締役などを経て2010年より現職。大阪芸術大学客員教授。