コスト削減は必要以上に不安を煽る

業績がよくならないとき、ついコスト削減に走りがちです。当社でも何度かやったことがあるのですが、なかでも社員に一番インパクトを与えたコスト削減策は「自動販売機の有料化」でした。実際コストは月30万円程度なんですが、「ここまでするなんて本当に会社が危ないのでは」と必要以上に社員の不安を煽ってしまったんです。私としては正直「こんなことで?」と思いましたが、食べ物ってダイレクトに感じてしまいますから、モチベーションに直結したようです。

業績改善のために最初にコスト削減に手をつけてしまうのは、どうしても最終利益に目がいってしまうからでしょうね。しかし、本質的には事業の成長は粗利益の成長だと思うのです。だから、ここをどうしていくのかというところから取り組まないといけない。トップラインが伸びなくなってしまうと、立て直しが非常に困難になりますから。

当社の主力事業である価格比較サイト「ECナビ」というサービスは、開始した2004年から比較的順調に売り上げを伸ばしたのですが、一度伸び悩んだ時期があります。06年の1~3月期に過去最高益を出したのですが、次の4~6月期で売り上げががくっと下がり、利益も赤字ギリギリのところまで落ちたのです。

最初は現場から「クライアント案件が月ずれした」といった報告がありましたが、次の四半期になってもその売り上げは立ちませんでした。そこで、自分たちの考えているトレンドとマーケットのトレンドがずれているんじゃないかと気づきました。当時はWeb2.0という言葉がスタンダードになり始め、GREEやはてなといった私より年下の、次世代の経営者が台頭しつつありました。そこで、私たちが気にしなくてはいけないのは“上”ではなく“下”であると思うようになったのです。

次世代ベンチャーに伍していくには、スピード感が非常に大切になる。しかし当社の場合、事業規模が大きくなるにつれ、社内で“調整”という言葉がはびこり、スピードを削がれつつありました。そういった背景から、この会社を徐々に「事業開発会社」という形に変えていきました。事業をどんどんつくっていくことが「事業内容」だという考え方です。