韓国とドイツのTOEICスコアが上昇した理由

移民を積極的に受け入れている国の特徴は英語圏だということだ。だから世界中から英語ができる人が来る。日本に来る外国人はまず言葉の問題で悩むので、来る人自体が減っている。したがって、私は英語の問題を抜本的に解決しなければならないと提案している。日本の文部科学省(文科省)は英語のできない国民を量産しているのが現状だ。

英語の力がついた国は韓国とドイツだ。この20年でTOEICのスコアがぐんと上がった。

韓国は金大中政権のとき、「IMF進駐軍の屈辱を二度と味わわないため」「世界に開かれた韓国をアピールするため」ということで、言語、IT、資本を国際開放した。そして韓国人の英語力が向上したのである。

一方、ドイツは失敗から学んでいる。ダイムラー・ベンツ(現メルセデス・ベンツグループ)は1998年にアメリカのクライスラーを買収したものの、うまく経営できずに2007年に手放した。それから3大化学会社(BASF、ヘキスト、バイエル)もアメリカで同業者をたくさん買ったが、うまく経営できなかった。

そういう状況を受けて、「英語で経営ができる人間しか部長以上にはしない」とドイツの3大化学会社と3大自動車会社(メルセデス・ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン)が同時に宣言したのだ。それが英語力向上の契機になっている。

英語を教えるのに日本語の試験をするニッポン

私はマレーシアのマハティール・ビン・モハマド首相のアドバイザーを18年務めていたが、同国ではシンガポールに次いで国語論争が出てきた。

独立後のマレーシアではイスラム原理主義の僧侶が強く、マレー語が国語とされた。学校で外国語の使用を強要すると、これらの人たちが反発する。そこで私はマハティール氏に「最終的な意思決定は政府がしない。マレー語を使うか、それとも英語で教えるかは学校に決めさせよう。個々の先生が決めてもいい」と提案した。すると彼は「ブライト・アイデアだ」と言ってこれを実行した。

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10年後、理数系は英語で教える人が多くなり、国語や宗教はマレー語を使うようになった。そうすると、理数系は英語圏のオーストラリアなどから大量の先生が入ってきた。彼らがそれから10年で、子どもたちみんなが英語を話せるようにした。

20年経ち、マレーシアの人はみんな英語ができるようになった。国際会議も英語で仕切れるようになった。英語を教えるのではなく、英語で教えるようにしたからだ。

日本もそのぐらいのことをやらなければいけない。日本教職員組合(日教組)や文科省のルールでは、「英語を教えるのには英語免許が必要だ。そして英語免許を取るには日本語で試験を受けないといけない」となっている。これでは明治時代とまったく変わらない。

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