「自衛官、消防士、警察官」は日本人がやるしかない

日本では2007年以降、死亡率が出生率を上回るようになった(図表3)。今後は15歳から64歳までの就業人口もどんどん減ってくる(図表3)。これは日本の構造的な問題だ。抜本的な解決策は今の政府にはない。

また、介護従事者も不足している。私は前青森県知事の三村申吾氏とは懇意にしている間柄だが、彼が「次はもう立候補しません」と言うので、驚いて理由を聞いたら、「実は故郷が奥入瀬で、親父とお袋の介護者がいない。だから私が介護するしかないんです」と言う。構造的に人がいないのだ。だから老老介護をするしかない。

この問題は日本でもかなりシリアスだ。私の会社も長崎県出身の役員から「辞めたい」と言われ、理由を聞いたら両親を介護する人がいないという。

私は「介護者を雇ってくれたら、費用は会社が全部払うよ」と言ったが、「いやいや、そんな人がいれば、もうとっくに頼んでいます」という状況なのだという。結局、長崎から完全オンラインで引き続き仕事をしてもらうことになったが、とにかく介護人材が足りないのである。

日本は、いずれ自衛官も消防士も警察官もいなくなる可能性がある。もちろん、すべてを外国人に任せるわけにはいかない。本来であれば30年ほど前から着手するべき課題だったのだ。

豪州は「1億円を預ければパスポート発行」で大成功

日本の人口を増やす施策としては、3つの方向しかない。

まず、戸籍制度のある国では、人は増えない。世界を見渡せば、韓国と日本だけ戸籍制度が残っていて、未婚夫婦から生まれた子どもは約3%しかいない。

一方、フランスでは約60%の子どもが未婚夫婦から生まれている。だから合計特殊出生率が約1.8に戻ってきているのだ。もちろんフランスをはじめとするヨーロッパの国々に戸籍制度はない。

2つ目に、女性の地位向上に注力し、「女系社会」にすることも必要だ。たとえば、デンマークでは、デンマーク人の女性が子どもを産んだ瞬間、その子どももデンマーク国籍になる。男性の名前を記入する欄さえない。男はどうでもいいのだ。

日本では民法772条第2項で「婚姻の成立の日から200日を経過した後、又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」と定められているが、いい加減なものだ。染色体を調べたら、大きな問題が起こるかもしれない。だからフランスでもデンマークでもそういうことはしない。

3つ目に、移民の積極的な受け入れが必要だ。たとえば、カナダは2024年から2026年までに毎年50万人の新規移民を受け入れることを目標に掲げている。受け入れた上でそれらの人々を教育するわけだ。オーストラリアはすでに新興国のような感じだ。他国から来た人が非常に活発に活躍している。

オーストラリアのやり方は面白く、「銀行に1億円を預けてくれた人は、その日にオーストラリアのパスポートをあげる」というものだ。だから金持ちだけが来る。資源に恵まれたオーストラリアには怠け者が多いと言う人もいるが、外国から来た人は次の日から働き始める。カナダもそうだ。