消費者庁が守っているのは事業者?

消費者の選択肢を狭める、という論旨は、いくら考えても意味がよくわかりません。機能性表示食品は、制度を開始した2015年度から増え続け約6000件の製品が届出し、6000億円を超える市場規模に急成長しました。

製品に機能性が表示されているからこそ、消費者に訴求力があるのです。制度厳格化の結果、消費者が、機能性を表示されていないものをやすやすと買う状況に戻ると消費者庁や関係者が思っているのなら、消費者をバカにしています。

それに、制度厳格化で、巧みな広告宣伝に消費者がごまかされるようになる、と本気で思うのなら、そうした事態が起きないように消費者庁が消費者に情報提供し、景品表示法に基づく取り締まりを厳しくするのが筋です。

5人も亡くなっている事件なのに報告書に「厳格化しすぎると……」と記載するのは、あまりにも業界の顔色をうかがい過ぎているのではないか。これでは、消費者を守る消費者庁ではなく事業者庁ではないか? 私はちょっと背筋が寒くなりました。

あなたは機能性表示食品を摂り続けるか

今回の問題は、海外にも情報が広がっています。

世界的に著名な『Lancet』という学術誌の2024年5月25日号にも、「The Beni-Koji scandal and Japan's unique health food system」という報告が掲載されましたので、世界の医療関係者に知れ渡った、と考えてよいでしょう。

日本の複数の医薬関係者による報告ですが、紅麹スキャンダルと記し、公的な諮問システムがない制度であり、紅麹サプリのエビデンスとなる論文が小林製薬の社員によって書かれ透明性に欠けていることなどを伝えています。さらに、次の一節が強烈な印象を与えています。

It is imperative that the economic benefits of health food products should not take precedence over safety considerations.
(健康食品の経済的な利益が安全性の検討よりも優先されるようなことは、あってはならない。)

もう1点、私が個人的に気になるのは、メディアの報道が一気に冷え込んだことです。今回の国の対応策も、小さくしか報道されていません。業界が相当にメディアに働きかけている、という話が聞こえてきます。消費者は、機能性表示食品の広告が、どれほどメディアを潤しているのかを考えるべきです。

厚生労働省による原因解明は続きます。紅麹サプリと機能性表示食品の問題はまだ、注目し続ける必要があります。さて、あなたは機能性表示食品を摂り続けますか?

※記事は、所属する組織の見解ではなく、ジャーナリスト個人としての取材、見解に基づきます。

<参考文献>
厚生労働省・紅麹を含む健康食品関係(令和6年3月〜)
消費者庁・機能性表示食品を巡る検討会
内閣官房・紅麹関連製品への対応に関する関係閣僚会合

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