シワが多い人は体内も老化している

ここからは、老化の仕組みを詳しく解説していきます。

ヒトの体は約200種・60兆個の細胞によって構成されています。それらの細胞は常に一定数死んでいて、それと同じくらいの数の細胞が新しく生まれています。ヒトの体のなかでは毎日1~2%、約6000億~1兆2000億個もの細胞が入れ替わっています。

このようなメカニズムによって保たれているヒトの体ですが、年齢を重ねていくにつれて「老化」していきます。

老化には、「テロメア」という細胞内の「染色体」の末端にある構造が深く関わっています。

本来、染色体はとても不安定な存在で、テロメアがないと何かの拍子に他の染色体とくっつく可能性があります。そうなると「DNA」の損傷が起こりやすくなり、遺伝子自体がダメージを受け、細胞が機能しなくなったり、がん化したりします。そのような事態を引き起こさないように、染色体の末端を保護しているのがテロメアです。

DNAのイメージ
写真=iStock.com/Jian Fan
※写真はイメージです

テロメアには、もう一つ重要な役割があります。細胞分裂の際、DNAの一部は複製されないため、そのままだと分裂のたびに短くなってしまいます。そこでテロメアは自分の一部を差し出すことで、DNAが短くなるのを防いでいます。その結果、新しい細胞も正確に複製された遺伝子を受け取れるようになるのです。

しかし、テロメアは細胞分裂のたびに短くなります。テロメアがある程度まで短くなると、細胞は「これ以上は分裂できない」と判断して分裂をストップします。そうやって分裂の寿命を迎えた細胞が「老化細胞」になるのです。つまり、テロメアを節約することが老化の予防につながります。

血流が滞ると体が錆びついていく

ここで、全体的なヒトの老化の仕組みにおいて、どのようにテロメアが関わっているかを見てみましょう。

生命を維持するにあたって、細胞は内部にある「ミトコンドリア」が細胞呼吸で産生した「ATP(アデノシン三リン酸)」をエネルギー源にして活動を続けています。そのATPを産生するのに酸素と栄養素が必要で、毛細血管を流れる血液から摂取しています。

しかし、仕事などでストレスがかかって自律神経の一つである「交感神経」が優位の状態になると、毛細血管が収縮して血流が低下します。すると、酸素や栄養素を十分に摂取できず、細胞呼吸の機能が低下して、ATPの産生効率も落ちます。そして、「酸化」の作用を及ぼすフリーラジカルが多く発生し、DNAや他の細胞の構成成分を傷つけるようになるのです。

そこで、体を構成している大多数の体細胞は、分裂することで、機能の維持を図ります。しかし先述の通り、分裂のたびにテロメアが短くなり、やがて限界に達して老化細胞に変化します。一方、新しい細胞を補充する役割を担っている「幹細胞」も、分裂の繰り返しで疲弊していきます。そして、細胞の補充が追いつかなくなり、組織や器官、臓器そのものが老化し、全身のあちこちで老化現象が起こるのです。

通常、老化細胞は「マクロファージ」をはじめとする「免疫細胞」で取り除かれます。ところが、加齢などが原因で免疫細胞の働きが低下すると、老化細胞は居座り続けます。厄介なことに、その老化細胞からは「炎症性サイトカイン」という炎症作用のある物質や、発がん促進作用のある物質が分泌され、ヒトの寿命を脅かすようになるのです。