だれが被害につながる製品名を公表するのか

しかも、対応策として明記されたのは、情報提供を義務化し場合によっては機能性表示を行わないよう指示・命令したり、営業の禁止・停止をさせる、ということまでです。

肝心なのは、深刻な被害につながりそうなものの迅速な製品名公表。集まってくる玉石混交の情報を仕分けて、機能性表示食品と因果関係がありそうな健康被害情報を見つけ出して判断し、製品名公表に至らなければなりません。しかも、この作業を情報把握から1、2週間程度でやれなければ、意味がない。時間がかかっては、2カ月後に公表した紅麹製品と結局は同じです。

こんな短期間での検討を、消費者庁と厚労省が連携してやれるのか? 製品名公表をだれが決断しどのように責任を担うのか? もっとも重要なことが、対応策ではなにも示されませんでした。

基準を厳しくしても未知の物質は調べようがない

2の「信頼性を高めるための措置」も、ずれた内容です。

最初に挙げられているのは「サプリメントに対するGMP(適正製造規範)の要件化」。GMPは、製造の各段階での問題点を予測し、それらが起きないように管理しチェックしながら製造するために設けられる“基準”のこと。常にそれを守りながら製造することで、一定の安全と品質を担保します。でも、製品の安全性の問題を根本から解決するものではありません。

仮に、紅麹製品が厳しいGMPにより作られていたら、と考えてみましょう。

今回の問題では、青かび(Penicillium adametzioides)がプベルル酸を作り、紅麹菌と一緒になって二つの化合物も作っていたと推定されています。二つの化合物はこれまで未知だった物質のようで、厚労省などがさらに詳しい解析を進めています。仮に今回、厳しいGMPによるチェックや検査を通っていたとしても、未知の物質は調べようがありません。

厚生労働省資料に掲載されたラットに投与した試験における近位尿細管の変性・壊死の所見例
厚生労働省資料に掲載されたラットに投与した試験における近位尿細管の変性・壊死の所見例(出典=厚生労働省「紅麹関連製品に係る事案を受けた機能性表示食品制度等に関する今後の対応について」)

GMPにより、青かびの混入を完璧にゼロにすればよいだけだ、と言われそうですが、実はそれが著しく難しい。原材料のコメはかびに汚染されやすく、とくに海外で生産され船で運ばれてくる輸入米は、かびが生えているのが当たり前です。かびは胞子を飛ばしいたるところに存在し、製造の現場や装置等も容易に汚染します。

食品はもともと生き物なので、かびや細菌が付いていて当たり前、なのです。高度な衛生管理策を講じている食品工場でも、つねにかびや細菌と闘っており、時々、自主回収が起きています。中小企業なら日常茶飯事であることは、厚生労働省の食品リコール情報のページで検索すれば明らかです。