イベントがユーザーをつなぐ架け橋に!
●慶應義塾大学商学部教授 小野晃典

「モンスターハンター」をプレーするときのキーワードは「協力」だ。1人のプレーヤーの能力はそれほど高く設定されていないため、最初は複数で協力しないとなかなかモンスターを倒せない。つまり、皆で力を合わせて初めて爽快感が得られるようデザインされている。

私のゼミの学生にもモンハンのプレーヤーは多い。「研究のために集まったけれど、気晴らしに……」と仲間でプレーすることもあるそうだ。一緒に戦う仲間を茶化してみたり、逆に真剣に助け合ったり、いろいろな遊び方をしているという。そこにはゲーム上のコミュニケーションを通じてリアルな友人関係を深めていく様子がうかがえる。

キャラクターに惹かれ、初めてモンハンをプレーした女性がまったく歯が立たず、「どうすれば倒せるの?」と周囲に聞き、誰かが「僕が助けてあげるよ」といった会話が生み出される状況は容易に想像がつく。

このようなコミュニケーションが生み出されるのは、メーカーがそれを意図してプロダクトデザインを行った結果であろう。

基本的に人間のコミュニティは狭い範囲で成立している。自分の周りに親しい人が何人いるか数えてみればそれは明らかだ。したがって世の中に口コミを広げようとするなら、ひとつひとつの小さなコミュニティの間に橋を架けていく努力が必要になる。モンハンの場合、複数プレーを前提とするという特性に加え、リアルなイベントが架け橋の役割を果たしたのだろう。

ユニクロやシダックス、渋温泉など、モンハンのコラボイベントの話題を知らない人は、仲間の話についていけない。コミュニティ内の話題に追いつこうとして、リアルなイベントに参加すれば、他のコミュニティとの接触も図られ、モンハンユーザーの輪が広がる。このような動きがこのゲームソフトの人気を支えているのかもしれない。

※すべて雑誌掲載当時

(石橋素幸=撮影)
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