主語がミツカンでは口コミは起こらない!
1990年代に入ってから「さしすせそ(砂糖・塩・酢・しょう油、味噌)」と呼ばれる基礎調味料の需要は減少傾向にある。家庭用酢の分野で約8割のシェアを誇るミツカンにとっても、これは深刻な事態だった。
「原因は、核家族化が進み調理の文化が若い世代に受け継がれにくくなったこと。結果、20~30代の調理スキルが落ち、酢を使いこなせなくなってきた。昔は『一汁三菜』が常識でしたが、最近では小鉢がはじかれて主菜のみという献立が増えていますよね。お酢のメニューは副菜が多いので、たいへん影響を受けます。魚から肉中心の食生活に変わってきたことも大きい要素です」(ミツカンMD本部MD企画部・前田哲也さん)
こうした厳しい環境のなか、同社が2009年2月に満を持して発売したのが「やさしいお酢」である。これは酢独特の鼻にツンとくる香りを抑え甘みを加えた調味酢で、野菜や魚介類にそのままかけても食材の味を崩すことなく簡単に酢の物ができ、肉料理にも使える。この商品特性をユーザー、とくに酢離れが著しい20~30代に広く訴求するために、同社はテレビCMを中心としたマス広告だけでなく、従来とは異なる販促を仕掛けた。その結果、「やさしいお酢」は基礎調味料では異例の大ヒットを記録。調味酢市場全体の底上げにも貢献し、10年度の調味酢市場の売り上げは、08年度比で26%増えた。
同社の戦略のひとつが、月間ページビュー4億9000万件を誇るレシピ検索サイト「クックパッド」との提携企画だ。若い主婦へ訴求するには、クックパッドが最良のパートナーであると考えた。
同サイトは30代女性の3人に1人が利用するといわれる巨大プラットフォーム。登録者はレシピの投稿や検索、評価ができ、有料会員(月額294円)になれば支持数の多いものが上位に表示されるようになる。