ミツカンは「やさしいお酢」の発売に合わせ、「お酢嫌い克服キャンペーン」と銘打ってクックパッドの登録者からレシピを募った。
「キャンペーン名から、あえて社名や商品名を外しました。ユーザーの関心はおいしい料理をつくることで、ミツカンの酢を使うことではありませんからね。結局、200~300のレシピ案が集まればよしとされるところに、1000以上の応募があって大成功。今後の商品開発の参考にもなりました」(前田さん)
レシピがひとたび人気上位にランクされれば、放っておいても需要は増えていく。ミツカンはさらにコンテストの入賞メニューを折り込みチラシ、新聞広告などに掲載して波及効果をねらった。
「メニューの提案はミツカンが主語(発信元)ではないほうが受け入れられやすい。口コミをコントロールしようと思ってもダメなんです。自社サイトでもレシピを紹介するコーナーがありますが、有名ブロガーや料理研究家に協力していただいたほうがページビューは伸びます」(ミツカンMD本部MD企画部・加藤美侑さん)
メーカー色を薄めた販促は、予想外の広がりを見せることがある。同社が2010年夏、クックパッドと行った「スゴだれ」企画では、料理研究家とともに酢を使ったタレ(酢、みりん、塩、ごま油)を考案し、そのタレを用いた具体的なメニューを定期的にサイト上で発表した。
「クックパッドのトップページにある『旬のキーワード』で、スゴだれが12日間連続で1位の快挙。タレがおいしかったのはもちろんですが、短くてインパクトのあるネーミングがよかったんでしょう。掲載するメニューすべてに『スゴだれでつくる○○』とキーワードを入れこんだ効果も大きかった」(前田さん)
スゴだれの名を浸透させ、副次的に需要を喚起する。この“遠回し戦法”が効き、その後、ユーザー自らがスゴだれを使ったレシピを投稿するまでに発展した。事前の企画会議では名称を「酢ゴだれ」にする案もあったそうだが、却下。大正解だった。