コストコは、何よりもコスト削減を重視する。その原則が様々な付加価値をもたらした。1つは情報の飢餓感だ。コストコのウェブサイトは簡素で、商品の情報はほとんどない。店舗を訪ねなければ、どんな商品があるのかわからない。

「店の魅力を伝えるためには、来店してもらうのが一番です。いつ来ても発見があるように、常に新商品を導入しています。自分自身、出張から帰ってきて久しぶりに店内を覗くと、『おや、こんな商品が』とワクワクするくらい。宝探し感覚で、エキサイティングな買い物を楽しんでほしいのです」(テリオ社長)

店内には「Wow商品」と呼ばれる特殊な商品がある。飾り気のないショーケースには2800万円のネックレス。スポーツ用品売り場にはカヌー。巨大なジャグジーや四輪駆動の輸入車を販売したこともある。品目は少ないが、「今日は何があるだろう」という期待を抱かせる品揃えなのだ。取材中にも、「すごい、これ見て!」とか、「わー、これ何!」といった驚きの声が聞こえてきた。

ネットがクチコミを加速「海外旅行気分で書く」

もう1つは独特の雰囲気だ。店内は商品陳列からトイレに至るまで、世界中で共通の設計になっている。商品の販売単位も国ごとに調整しない。いずれもコスト削減のためだが、それが「非日常性」を生んでいる。

レジのすぐ後ろにある「イートイン」では、直径45センチのピザや長さ20センチ以上のホットドッグが食べられる。前者は1500円、後者はフリードリンク付きで200円。手頃な価格で、海外旅行のような気分を満喫できる。実際、米国より日本のほうが店内滞在時間が長いという。

「昨日声をかけたお客様は『もう3時間半もいる』と言っていました。店内をしばらく回って、ホットドッグを食べてひと休み。その後、また売り場に戻って買い物を楽しんだそうです」(テリオ社長)

こうして買い物を楽しんだ客が、クチコミで新たな客を連れてくるのだ。