平日の昼下がりにもかかわらず、親子連れのグループや若いカップルで店内はにぎわっていた。卸売りのような大型商品も「アメリカンサイズ」の大型カートに収まると自然に見える。通路は広く、カートの行き交いはスムーズだ。

川崎倉庫店の売り場面積は約5300坪。ほかの店舗も売り場面積は平均で約4000坪の広さがある。しかし扱う商品は4000品目と非常に少ない。標準的なコンビニエンスストアで売り場面積は30~50坪、品目数は2500~3000である。徹底的に品目を絞り込むことで、1つの商品を大量に仕入れ、「良いものを安く」を目指している。

コストコは会員制だ。年会費は4200円。入会時に写真撮影があり、会員証の裏に写真が貼られる。入店時には厳しい本人確認が行われ、非会員の同伴は2名まで。会員でない人は店内を覗くこともできない。それゆえに「知る人ぞ知る」といった秘密めいた雰囲気もある。

上陸当初は「日本の商習慣には合わない」とか、「複雑な流通制度に馴染めないだろう」などと冷ややかな評価も少なくなかった。しかし一向に収束しないデフレを背景に、消費者のクチコミが広がった。テレビ番組で「こんなに大きい!」と興味本位に取り上げられたこともある。週末には入会待ちの行列ができ、さながらテーマパークのようだ。

驚くべきことに、「費用の伴う宣伝は一切しない」(広報担当者)。日本法人のケン・テリオ社長は「すべては『良いものを安く』という目的のためです」と話す。

「(日本での)業績は右肩上がりに伸びています。広告は一切していません。すべてクチコミです。高品質の商品を安く提供することで、楽しんでもらえる店内にしています。そうすれば、お客様がお客様を呼んでくれるのです」