タスクそのものもまた「小分け」にする必要があります。運動不足を解消したいと思っている人がいきなり毎日20キロメートルを走ろうとしても、すぐに膝を痛め挫折してしまうでしょう。そういう場合はまず1キロメートルを7分×週2回で走ってみて、1カ月続けられたら距離を延ばし、ペースを早め、回数を増やしてみる。自分が噛み砕けるサイズに小分けすることで、継続できるようになります。

勉強も同じでいきなり大量にやっつけようとせず、1日1項×30分×週2日などと課題を小分けにしつつ、徐々にボリュームやペースを上げていくのが効果的です。

2つ目のキーワードは「伴走者」です。人の意志はいつまでも強いまま継続しません。最初こそ「どんな困難も乗り越えて、絶対に成し遂げる」と決意を強く固めても、幾度も壁にぶち当たり停滞するとだんだんとモチベーションが萎えてきます。

そんなとき、伴走者がいると「この資格を取れば新たな世界が広がるんだったよね」「大丈夫、確実に目標に近づいているから」「もう少し取り組みを小分けにしてみたらどうだろう」など、声を掛けたり励ましたりして初志を思い出させ、元のコースに戻してくれるのです。

伴走者の声掛けの中でも、特に効果大なのが「称賛」です。BJ・フォッグ氏も『習慣超大全 スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』(ダイヤモンド社)の中で力説している通り、人はやれなかったことを責めるのではなく、できたことを褒められることでモチベーションを維持し、着実に能力を伸ばしていくことができるのです。

3つ目のキーワードは「きっかけ」の設定です。勉強はタスクを小分けにすれば短時間でもできますし、電車内でも公園のベンチでもできます。ただ「いつでもどこでもできる」となると、逆にいつまでもやらず後回しにしてしまうのも“あるある”ではないでしょうか。

それを防ぐには「○○へ行ったら勉強をする」というように行為と場所を紐づけて、そこへ行ったら自動的に勉強モードに切り替わるよう意識に覚え込ませるのが効果的です。生徒にとってはまさに「塾」がその場所になります。そこに行けば「さあ始めましょう」とスタートを促してくれる伴走者もいます。

ただし、独学や自習をベースとするビジネスパーソンは、自分でそういった場所を探し、設定しなければいけないことも多いでしょう。コツは場所だけでなく曜日や時間も固定してしまうこと、そこへ行く前にあらかじめ何をやるかを決め、準備を整えておくことです。

例えば、“スタバ”などはどうでしょう。月・水・金の出勤前30分は職場近くで勉強すると決め、その日解く問題(あるいは読み込む資料など)は前日までに揃えておいて、席についたらコーヒーに口をつけるよりも先に、問題に取り掛かるのです。周囲の視線を意識して(多少自意識過剰でもいいんです)存分に「頑張っているオーラ」を出してみましょう。

カフェでノートパソコンを使用している女性の手元
写真=iStock.com/damircudic
※写真はイメージです

あらかじめ決めた範囲をこなしSNSで「今日はここまでこなしました」と発信すれば、誰かが「いいね!」をつけてくれるかもしれません。それも立派な「称賛」です。そんなことを3カ月も続ければ、何かはモノにできているでしょう。

成長が実感できれば何をどう学んでもいい

さて、ここまでは「何を勉強したいか」が決まっている人の話でしたが、読者の中には「自分を高めるために勉強はしたいけれど、何に取り組めばいいのかわからない」という人もいるのではないでしょうか。

ビジネスパーソンには、最優先で取り組まなければならない仕事があります。本業の仕事が忙しいと、自分のためにする勉強は優先順位を下げてしまいがちです。だからなのか、パーソル総合研究所が2023年に行った調査では、就業者全体の56.1%が「業務外の学習時間なし」、つまり勉強は何もしていないというデータが出ています(「学び合う組織に関する定量調査」)。

私は、人が学ぶことの本質的な目的は「昨日できなかったことが今日できるようになる」「昨日わからなかったことが今日わかるようになる」といった成長の実感を得て、人生を充実させることにあると思います。