受験勉強は社会に出てから役立つか。医師の和田秀樹さんは「受験勉強により長時間知識を定着させ、必要なときにいつでも取り出せるようになる。また、受験の際に志望校を設定し、それに何とか合格するような方策を工夫するなかで身に付く『勉強習慣』『努力の維持』『感情コントロール』『わからないことは人に聞く』などは社会に出てからいずれも役に立つ」という――。
※本稿は、和田秀樹『勉強できる子が家でしていること』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
知識や経験を、問題解決につなげる方法
「頭がよい」というのは、単に「勉強ができる」ということだけではありません。
認知心理学の見地からいいますと、「頭がよい」というのは、「問題解決能力がある」ということになります。できるだけいろいろな場面で問題を解決できる人ほど頭がよいということです。
問題を解決する場合には、自分の持っているさまざまな知識や経験を駆使して推論し、解法をシミュレーションしていきます。
このときには、知識が多ければ多いほど、考える材料が多くなり、推論パターンも豊富になりますから、知識が豊富だということは、頭のよさの条件の1つです。
ところが、知識が豊富すぎても、「アメリカの○○という学者はこう言っている」という風に、問題に対して知識だけで答えてしまう場合も出てくるかもしれません。あるいは、知識や経験則が推論を縛ってしまうということもあるでしょう。
そこで、知識をうまく推論につなげるためには、「メタ認知」という態度が必要になります。これは、一段高いところから、自分の思考パターンなどを客観的に見つめようとする態度のことです。