受け身で黙っているだけでは「心の壁」が生じやすい

人の話を傾聴するときは、まず、相手に体を向けましょう。

もしあなたが新聞や雑誌を読んでいたなら、それをテーブルに置いて、顔を上げましょう。テレビも消しましょう。そして、話し手に体を向けましょう。

この行動は、相手に次のようなメッセージを伝えます。

「あなたは、私の関心と時間を使うに値する人です。私にとって、あなたはそれだけ大切です。私はあなたと話をしたいし、あなたの言いたいことを理解したいです」

相手は、あなたの誠意を感じるでしょう。これは、傾聴には絶対に欠かせない、大切なことです。

人見知りの傾向が強い人ほど、「人から悪く思われるんじゃないか」という不安が強いために、自分のことを話すのが苦手です。

会話の場面でも受け身的で、自分からはあまり話さないので、話し役よりも聞き役になることが多くなります。そんな人は、「自分は人の話を聴いている」と思っていることがあります。

コーヒーを飲むカップル
写真=iStock.com/stockbusters
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しかし、傾聴とは心の壁をつくり、受け身的に黙っていることではありません。心の壁は相手にも何となく伝わり、相手のほうも心の壁をつくってしまいます。

相手が自発的に話しているように見えたとしても、間を埋めるために仕方なく話していることも多いものです。ラクな気持ちで正直に話しているわけではありませんし、受け身的な人に話をしても楽しいどころか、疲れます。

聴き手が表情や反応に乏しかったり、心を閉じたりしていると、相手は内心「話しづらいなあ……」と感じ、冷や汗をかいてしまいます。

傾聴では、話し手に興味を持ち、「話し手が伝えようとしていることを理解しよう」と、積極的な態度で耳を傾けます。

聴き手は自分から壁を取り去ってリラックスし、オープンで積極的な心持ちで人と向かい合い、話し手が伝えたいことを教えてもらおうとすることが大切です。

豊かに反応されると話しやすくなる

傾聴するときには、あなたが話し手に関心を持っていることを体で伝えましょう。そのためにとても重要なのが「うなずき」です。

私は傾聴力を上げるセミナーをたくさん依頼されますが、一般の人たちを対象としたセミナーでも、プロ・カウンセラーを対象としたトレーニングでも、いつも必ず感じることがあります。

それは、参加者のうなずきが少なすぎることです。練習のとき、聴き手本人は十分にうなずいているつもりなのですが、話し手からすると、うなずきが小さすぎるし、うなずく頻度も少なすぎます。聴き手の反応が薄すぎて話しづらいのです。

そこで、私が聴き役をして傾聴のデモンストレーションをします。すると、周りで観察した人から、「先生のうなずきが多すぎて不自然な感じがしました」という正直な感想が出されることがよくあります。

しかし興味深いことに、デモンストレーションで私の相手として話し役をした人は、「すごく話しやすかったです」とか「もっと話したかったです」と言うものです。

外からはうなずきが大きすぎるとか多すぎると見られるぐらいが良いのです。聴き手がそれぐらい豊かに反応してこそ、話し手は話しやすくなります。

ですから、傾聴するときには、話し手を見ながら大きくたくさんうなずきましょう。すると、次のようなメッセージが伝わります。

「あなたの話を理解しています」
「私はあなたに関心があります」
「あなたの話を聴きたいです」
「あなたは私にとって大切です」