※本稿は、古宮昇『一生使える! プロカウンセラーの傾聴の基本』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
使い方ひとつで「質問」は「尋問」にもなりうる
傾聴では、話し手のペースに沿って話を聴いていきます。聴き手からはどのように質問すればよいのでしょうか?
聴き手が質問を上手に使うと、話し手は話しやすくなります。
上手な質問のコツは、話の流れに沿った質問をすることです。そうすれば、話し手は話したいことをさらに話しやすくなります。話し手が話したいことをより話しやすくするのが適切な質問であり、話そうとしていないことを掘り下げるような質問は対話の邪魔をします。
根ほり葉ほりの尋問になってしまっては、話し手が嫌な思いをします。また、あれこれと質問しすぎると、傾聴の対話ではなく一問一答式のやり取りになってしまいます。
それでは話し手は質問に答えるだけになってしまい、本当に話したいことを話すことができなくなります。
話し手の話の流れに沿っている質問と、話の流れを邪魔する質問を比べてみましょう。
《質問を上手に使う対話》
【話し手】今年ね、大きな震災に遭ったんです!
【聴き手】えっ、地震に遭われたんですか!
【話し手】ええ、かなり揺れましてね。怖かったですよ
【聴き手】それは怖かったでしょう
【話し手】ほんと、怖かったです。で、私は大丈夫だったんですけど、妻がケガをしましてね
【聴き手】そうなんですか。おケガはひどかったんですか?
【話し手】家から逃げ出そうとしたら、転んで脚を折ったんです。それで、3日ほど入院しまして
【聴き手】3日間も?
【話し手】それが、妻は骨折より、地震の揺れがすごくショックだったようで、夜もうなされるようになって、今もときどき眠りが浅い日があるんです(心配そうな様子)
【聴き手】そうですか。ショックが尾を引いておられて、それはご心配でしょう?
《根ほり葉ほりの尋問をしている対話》
【話し手】今年、大きな地震に遭ったんです
【聴き手】いつですか?
【話し手】3月です
【聴き手】どこですか?
【話し手】茨城です
【聴き手】震度はいくつだったんですか?
【話し手】5ぐらいです
【聴き手】へえ……
【話し手】はい……(話が続かない)
上の2つの対話は、何が違うのでしょうか。