話しやすくなるよう助けるのが適切な質問

《質問を上手に使う対話》では、聴き手は話し手の話の流れに沿って、話し手が話したいことを話しやすくなるよう質問をしています。具体的に見ていきましょう。

まず、聴き手は話し手が話したいことに沿って質問をしています「おケガはひどかったんですか?」「それはご心配でしょう?」がそれにあたります。

そして、聴き手は話の大切なポイントを短く返し、共感的な態度を伝えています。「えっ、地震に遭われたんですか!」「それは怖かったでしょう」「3日間も?」「ショックが尾を引いておられて、それはご心配でしょう」といった応答です。

カフェで話す二人の日本人女性
写真=iStock.com/davidf
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それに対して《根ほり葉ほりの尋問をしている対話》では、聴き手は話し手の内容に沿うことなく、聴き手が知りたいことを尋ねています。また、理解をしめす応答ではなく質問ばかりなので、会話もはずんでいません。

《質問を上手に使う対話》は傾聴ができていますが、《根ほり葉ほりの尋問をしている対話》は事情聴取のようになっています。プロ・カウンセラーであっても、実力の低い人は傾聴ではなく事情聴取をしてしまっていることがよくあります。

2つの違いについて、さらに詳しく見てみましょう。

会話のコントロールを話し手に委ねる

話し手の気持ちや考えを自由に話してもらおうとするのではなく、聴き手が知りたいことを話させようとしたり、話し手の感情に注意を当てず、話の事実ばかりに注意を向けたりすると、事情聴取になってしまいます。

事情聴取の目的は、聴き手が知りたい情報を集めることです。ですから、聴き手が話の内容をコントロールし、何を話させるかを決めます。そして、起きた事件について客観的な事実をつかもうとします。もし何も話してもらえなければ、事情聴取は進みません。

それに対して傾聴は、会話のコントロールを話し手に委ねるものです。聴き手は話し手についていきます。客観的な事実を集めるのではなく、話し手が伝えたいことを、できるだけ話し手の身になって理解しようとします。

学校でも、問題を起こした子どもを呼び出して話を聞くとき、事情聴取と説教だけで終わってしまうことがよくあります。

その子の気持ちをその子の身になって理解しようとするよりも、「いつ」「どこで」「何をしたか」という客観的な事実の情報を集めるとともに、「なぜそんなことをしたのか」と問い詰めるのです。

しかしそんな態度で接すると、そこが警察署であれ学校であれ、話し手は脅威を感じていっそう心を閉ざすものです。もし事情聴取によって心がラクになったり人として成長したりするなら、警察の事情聴取によって犯人は癒され、更生するでしょう。