相手に安心感を持って話してもらうには何をすればいいか。心理カウンセラーの古宮昇さんは「当たり障りのない話しやすい話題を振って、とにかく話してもらおうとするのは最善の方法ではない。沈黙を恐れて聴き手にゆとりがなくなると、話し手のペースにゆだねて待つことができなくなる。そんな人間関係では、話し手は安心して話すことが難しい。逆に、聴き手が『話しても話さなくても、どちらでもいい』と心から思えていると、話し手にとってその人間関係は安全なものになる」という――。
※本稿は、古宮昇『一生使える! プロカウンセラーの傾聴の基本』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
傾聴では沈黙を避けなくてもいい
沈黙を苦手とする人は多いものです。
社交上の会話であれば、沈黙が生まれないよう、お互いに共通している話題や、相手にとって興味のある内容、話しやすい内容を持ち出してあげるとスムーズな会話になります。
お天気の話をする、相手の服装を褒める、相手の趣味や休日の過ごし方を尋ねるなどが良いでしょう。
そして、相手の話に対し、明るい表情で大きく何度もうなずく、キーワードを短く返す、相手がわかってほしい要点を短く返すなどの傾聴の応答を積極的に行えば話は盛り上がりやすくなります。
しかし、私がカウンセラーとして話を聴くときには、話しやすい内容を相手に振ることはありません。
初対面の来談者でも、「今日はどういうことでお越しになられましたか?」と、いきなり本題に入ります。お天気の話などは時間の無駄となりますし、本当に悩んでいる人に対して「深刻な話は受け止められません」というメッセージを伝えることにもなりかねません。
傾聴では沈黙を避ける必要はないのです。