しかし、固定支出は毎月決まった金額だけに、1度そぎ落とせばその分は安定して結果が伴ってくる。裏を返せば、固定支出はカットしない限り、家計から永遠にお金を搾取し続ける寄生虫なのだ。

厳密な意味の会計用語としての「固定」や「流動」という支出分でなく、毎月必ず支払う必要のあるものを「固定費」というくくりで仮定して見ていくと、ムダな固定費のワーストワンは「ムダな会話やメールのもととなる携帯電話代」である。

Aさんの場合も、この項目が気になる。携帯電話代は、生活や仕事に使っている部分は「消費」だが、過度のメール受信やサイト閲覧部分は「浪費」だ。最近、相談にくる家計を見ると、携帯電話代が手取り収入の1割近くを占めている場合が少なくない。だが、約5200人の家計診断の経験から言うと、携帯電話代が高い人は貯金もヘタという法則がある。気持ちが、「ケータイ」という通信ツールに持っていかれすぎなのだ。

そこで、携帯電話代を毎月のコストでとらえるのではなく、長期的なトータルコストを計算してみよう。仮に月々の支払いは1万円(パケット料金込み)だとしても、10年経てば120万円になる。Aさんは通信費を1万3000円くらい節約し、浮いた分で、夫だけでも保険に加入したい。

個人的には、夫婦ともに安定した収入があり、1000万円以上の貯蓄があれば、年齢に関係なく保険に入る必要はないと思っているが、所得や貯蓄が少ない人ほど必要度は増してくる。Aさんの場合は貯蓄が60万円。小さい子どもがいるので、死亡保障もつけたいところだが、まずは医療保障が先だろう。入院日額1万円を確保できる、掛け捨ての医療保険に入ることをおすすめする。

あとは「消費」の部分を少しずつ削って、何とかボーナスからの補てんをいまの半額にしたい。すると年に19万円以上を貯蓄に回せることになる。