大和ハウス工業で注文住宅のトップセールスとして名をはせた人物――そう聞くと押しが強く声が大きい「肉食系営業マン」を想像する。ところが目の前に現れた笹沢竜市さんは、ホテルマンのような柔らかな物腰の「草食系営業マン」に見えた。
現職は広告代理店社長だが、経営者として社員をリードするタイプではないという。
「会社の朝礼のときでもほとんどしゃべらず、社員にしゃべってもらっています。最後に『社長何かありますか?』と聞かれるけれど『ない』って答える」
しかしこのコメントに“欺されて”はいけない。「社員にしゃべってもらっている」ところにセールスで培った気配りノウハウが隠されている。
営業マン時代の話。笹沢さんは顧客の本音を引き出すことに腐心したという。
「注文住宅の場合、最初にお客様の家づくりに対する考え方をしっかり聞いておかないと、途中でどんどん方向がずれてしまう。ところが最初から本音で話してくれる人は少ないのです」
例えば顧客が「コスト重視で建てたい」とリクエストしたとする。
「でもそれは一般論的に言っているにすぎず、実はステータスを感じる家にしたいとか、健康に配慮した内装にしたいというような本音が別にある。そこをくみ取るのが私の仕事でした」