日本でもインターネット配信が主流になる

DAZNとの交渉に際し、Jリーグを代表して直接向き合うことになったのが、機密保持のために厳選された5人のメンバーによる、通称「チーム5」。その筆頭であった中西には、スポーツ中継のOTT(オーバー・ザ・トップ=インターネット配信)が、日本でも主流になるという読みがあった。

スマホでサッカーの試合を見ている人
写真=iStock.com/simonkr
日本でもインターネット配信が主流になる(※写真はイメージです)

Jリーグの苦しい時代を支えてくれた、スカパー!には深い恩義を感じていた。

しかし一方で、「日本では地上波から衛星放送のステップを踏まず、一気にOTTが普及する」という、揺るぎない確信が中西にはあったのである。

確信の背景にあったのは2点。ちょうどネットフリックス(Netflix)が日本に上陸して人気を集めていたこと。そして日本とヨーロッパとの間に、放送環境をめぐる違いがあったことである。

ヨーロッパは地上波のチャンネルが少なかった

「なぜヨーロッパでは、サッカーの衛星中継でカネが取れるようになったかというと、もともと地上波のチャンネルが少なかったから。たとえば英国だとBBCを含めて4社しかない。そこにルパート・マードックによる多チャンネルの概念が注入されたら、みんなそっちに流れていったわけですよ」

ルパート・マードックとは、アメリカでフォックス放送を立ち上げた、世界的メディア王のことである。

「でも日本の場合、地上波が多チャンネルだったので、WOWOWやスカパー!が広まるよりも早く、インターネットのほうに向かっていくだろう、というのが当時の僕の読み。村井さんも、僕の考えに同意してくれました」

DAZNとの大型契約については「10年間で2100億円」という数字ばかりに、つい目を奪われがちだ。確かにDAZNマネーが、Jリーグに豊穣な潤いを与えることとなったのは事実。