インター後の進路とデメリット

かつて日本にあったインターの多くは、ブリティッシュスクールやアメリカンスクールなどイギリス系やアメリカ系だったが、近年はグローバル・インディアン・インターナショナルスクールやユーアイインターナショナルイスラミックスクールなどインド系、イスラム教系の学校も急増している。インド人やイスラム教徒が、日本に多く住むようになったからだ。加えて、日本人経営者が日本人のためにつくった日本系まで出てきた。

多様な人種の子供たちと教師の笑顔
写真=iStock.com/evgenyatamanenko
※写真はイメージです

インターに入って以降の進学先についても、近年は多様化している。従来なら高校もしくは大学で海外の学校に入ることが普通だったが、「インターの小学部を卒業後、中学受験をして日本の私立中高一貫校へ進むというケースが増えてきました。大学は日本で、という人も多い。高校までインターに通ったうえで、東京医科歯科大学や岡山大学医学部など国際バカロレア選抜を採用する大学に進む人もいます。日本の大学は授業料が安いので、大学時代は日本でお金を節約して、最終学歴である大学院で海外に留学するというケースもあります」(村田氏)。

ただしデメリットもある。村田氏が具体例を挙げ説明する。

「インターに通っているお子さんに、『地域のお祭りに行った?』と聞いたら、『友達がいないから行きませんでした』と答えたんです。『友達は皆インターの子で、遊ぶときは渋谷です』と。インターに通うと世界的な視座を持つことができますが、自分の住む地域や身の回りのことへの関心が低くなる傾向があります。『カンボジアで孤児院を手伝いました』と語るお子さんは、日本にも貧困問題があることに気づいていない」

さらに、インターを出て海外の大学に入学できても、苦労は多い。

「インターの卒業生であっても、海外の大学に苦もなく馴染めるかというと、必ずしもそうではありません。アウェーの場でマイノリティーとして過ごすわけです。これは日本人だけではありません。アメリカ人の両親のもとに日本で生まれ、インターで学んだお子さんがアメリカの大学に入ったんです。でも1年でメンタルを病んで帰ってきました。ブロンドの髪で青い瞳。見た目は完全なアメリカの白人ですから、人種差別をされたわけではありません。それでも『アメリカは怖い。治安が悪い』と日本に戻り、日本企業で働いています」(村田氏)

慶明氏も、就職先という観点からこう説明する。

「海外の大学では、2年生くらいから地元の企業でインターンシップを経験し、そこで頑張って認められて雇ってもらうのです。ただ、卒業後1年間は特別に就労ビザをもらえますが、その後は改めてビザを取得する必要があります。企業側からすれば、外国人を雇うためにはビザの発給を弁護士に依頼しないといけません。そこまでしてでも欲しい人材でない限り、雇い続けてはもらえないのです」

慶明氏によると、インターで学ぶことに向かない家庭もあるという。

「小学校受験に失敗したから入れたい、といった親御さんがいます。そんな甘い考えでは通じません。またなかにはパスポートを持っていない、つまり海外に一度も行ったことのない子供を入学させようとした親御さんもいました。英語漬けで異文化の中で学ぶのですから、それ以前にまずは海外に行き、子供が合うか合わないかをみないといけません」

海外の学校同様、インターでは、ボランティアなど親の学校行事への参加がとても大切だ。親の役割はインターに入れることで終わるわけではない。子供の日本語力や日本文化への理解力を高めるよう努める必要がある。

慶明氏は、シリコンバレーで賢吾氏を育てていた頃、動画配信サービスを契約して日本のニュースやアニメなどの番組を見せるよう心がけた。またホームパーティーにはなるべく日本人を招くようにしたという。子供を国際人として育てるには、想像以上に親の負担が大きいことを覚悟しないといけないようだ。

とはいえ、インターで学ぶメリットは計り知れない。

「海外の学校同様にインターでの学びでは、正解に至るプロセスを大切にします。授業は児童・生徒によるディスカッションが中心。答えは一つではなく、討論しながら『自分はこう思う』と考えを発表していく。寝ている暇なんてありません。そのため自分の主張を発信できる人間に成長できますし、セルフプロデュースがうまい人間になます」(慶明氏)

また、教科学習以外の能力も要求され、一芸に秀でていれば高く評価される。

「昨年、ニューヨークのフォーダム大学に合格したお子さんがいます。絵を描いたら抜群に上手なお子さんなのですが、願書にそうした特技や長所を惜しみなく表現したところ、それが認められて、奨学金だけでなく寮に優先的に入る権利も獲得しました」(慶明氏)

インターと海外とで教育を受けた賢吾氏は、そのメリットについてこう語る。

「私は、明日からどこか違う国に住まないといけない、という状況になっても、その新しい国で仕事を見つけられます。英語と異文化を学んだ経験は、可能性を無限に広げてくれます。自分に子供ができ、その頃に日本に住んでいたら、やはり子供はインターに入れたいですね」

真の国際人として成長するためには高い壁があるが、インターでの学びはそれをクリアする第一歩となるに違いない。

インターナショナルスクールタイムズ編集長 村田 学氏

Future Education代表 青島慶明氏

青島賢吾氏 西町インターナショナルスクール出身、UCLA 卒。ゴルフのトップアマ。現大手外資系金融会社勤務

(菊地武顕=文)
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