よかれと思ってもプレッシャーになるのは……
負担や責任を増やすときも、時間をかけて徐々にやった方がうまくいく。急がば回れの原則は、特にこのタイプの人に当てはまる。本人に責任がかかりすぎないように、チームで責任を担う仕組みを作るのも一法だろう。
社内コミュニケーションを活発にしたり、コミュニケーション力のアップに熱心な人が社員にスピーチをさせたり、デスクの垣根を取り払って、オープンスタイルにしたりするところもある。
だが、実際には、回避性の人にとって、それはただ苦痛が増すだけで、職場の居心地が悪くなる効果しかない。朝礼でやらされる一分間スピーチが厭で、仕事を辞める人もいる。一分間スピーチをする能力と、技術的な能力はまったく無関係だ。良かれと思ってソーシャル・スキルトレーニングなどをしても、本当に必要な人には苦痛なだけだ。
回避性の上司の最大の欠点
昨今では、上司が回避性だということも少なくない。もともと回避性の人は、責任を担ったりリーダーシップをとったりするのは苦手であり、上に立つのは向いていない面もあるのだが、必ずしも悪い面ばかりではない。
まず、回避性の上司は、衝突や対立を好まないので、感情的に怒鳴りつけるということも滅多にない。日常的に大声を上げ、部下を平気で罵る自己愛性の強いパワハラ上司に比べると、まず接する上でのストレスが小さい。自分を振り返ることを知らず、部下の意見など聞く耳をもたない独善的なところも少なく、こちらの意見にも一応耳を貸す。
ただ、回避性の上司の最大の欠点は、自分で責任を取りたがらないことだ。自分で判断し、決定するのも苦手で、決断が遅い。対応も延び延びになりがちだ。部下に判断や対応を押し付け、しかも、責任まで押し付けてくることにもなりがちだ。
また、新たな試みやチャレンジにも慎重で、積極性に欠ける。失敗するリスクや負担が増えることの方にばかり目が行って、無理をせず現状維持で行こうとする。だが、結局それが、対応の遅れにもつながり、後手後手に回ってしまうことにもなりがちだ。機敏さや機動性というものには、欠けたところがある。
したがってやる気のある部下ほど、頭を押さえられる感じになり、せっかくの意欲をそがれてしまう。