現実の課題を避けようとする傾向を「回避性」という。もしも職場に回避性の傾向が強い人がいる場合、お互いにどうすれば働きやすくなるだろうか。精神科医の岡田尊司さんは「追い詰めてはいけない。どれだけ効果的にその特徴を活かすかが大切」という――。

※本稿は、岡田尊司『生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

回し車の中で走る人
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回避性の部下を使いこなさないと回らない…

若い人に回避性の傾向が強まっていることもあって、最近の会社では部下が回避性というケースも増えている。アグレッシブな上司の場合は、つい発破をかけたり、ときには激しく叱りつけたりする。しかし、そうした常識的な対応は、大抵事態を悪化させてしまう。一気に潰れてしまうか、会社に来られなくなってしまうというケースも少なくない。

回避性の人は、期待や責任を過大に感じ、大きなプレッシャーがかかると簡単に潰れてしまう。まず、そのことを理解しておくことが大事だ。能力的には、とても優れた面や独特の感性を備え、うまく使えば、よい持ち味を発揮してくれる。

今日では、回避性の人をうまく使いこなせないと、人が回らない時代になっている。営業系の職場ならば、体育会系の人や自信たっぷりな人たちばかりを集めることもできるだろうが、技術系や専門性の高い職場となると、むしろ回避性の人たちが主役で、このタイプの人を除外したのでは、業務が成り立たない。回避性の部下を、どれだけうまく使いこなし、その能力を発揮させるかに、上司の腕が問われるとも言える。

短調な仕事もきちんとこなしてくれる

では、どういう点に配慮する必要があるのだろうか。まず一つ目は、急に責任や負担を増やさないことだ。

回避性の人は、実際には余力がある場合でも、責任や負担が増えることに対して不安が強い。負担が増えるという点に意識が向かうと、自分に耐えられるか自信がなくなり、そんなつらい思いをするくらいなら逃げ出したいという気持ちになってしまう。

このタイプの人は、現状を維持しようとする傾向が強い。それゆえ、新しいこと、慣れていないことをやらなければならないと聞いただけで、不安が兆し、うまくできなかったらどうしようと尻込みしてしまう。

逆に言えば、慣れたことを続け、現状を維持することには抵抗がない。あんな単調なことを毎日やっていて苦痛ではないかと思うようなことでも、割合苦にならずにこなし続ける人が多い。最初は自信がなくても、一旦慣れてしまえば、きちんとこなしてくれる。あまり目移りしないので、飽きて投げ出してしまうということが少ない。