摂取が消費者の自己責任になっている

また、医薬品の製造販売は医薬品医療機器等法で規制され、厚生労働省と都道府県の許可・承認を得ないといけません。製造販売が始まった後も、原材料の入庫から製品の製造・加工、出荷に至るまでGMP(医薬品の製造管理及び品質管理の基準)で管理し、定期的な査察を受け、薬効を示す成分や賦形剤など目的以外の成分の摂取が極力ないように管理します。

しかし、機能性表示食品の場合、医薬品の安全管理とはほど遠いレベルのガイドラインしかありません。実際に小林製薬の紅麹サプリでは、紅麹原料を作る段階の工場はGMP準拠でなかったことも明らかになっています。畝山さんはこう指摘します。

「製造ロットによってモナコリンKの産生量が異なり、同社がそれをブレンドして、サプリメントのモナコリンK含有量が1日あたり2mgになるように揃えていたことを、同社自身が認めています。モナコリンKの産生量が違うということは、原材料の変動等も手伝って紅麹菌の代謝生合成系の活性が違い、ほかの物質も異なる可能性がある、ということ。紅麹サプリには、モナコリンK以外のさまざまな物質も含まれ、同社も把握できていなかったのでは?」

結局のところ、食品として製造管理をされていた医薬品相当成分が、ほかの物質と一緒にサプリメントとなり、医師のチェックもなく消費者に購入され、自己責任で摂取されていた、というのが紅麹サプリの実態なのです。

ちなみに、モナコリンK=ロバスタチンのLDLコレステロール低下効果は弱い、と多くの薬学者は言います。一方で、頭痛や吐き気、下痢、筋痙攣などの副作用が報告されています。そのため、より効果が高く副作用の少ない類縁体(スタチン類)が開発され、日本でも医薬品として販売されています。

現在販売されているスタチン類の医薬品の薬価はおおむね、1日に数十円程度。一方、小林製薬の紅麹サプリの価格は、値引きなどもあるものの、1日に100円ぐらいでした。あんなずさんな管理だったのにこの価格? 医薬関係者が怒るはずです。

アメリカは紅麹サプリを購入しないよう注意喚起

紅麹菌には以上のように1970年代から医薬品としての研究背景があるため、海外で食品のリスク評価を行っている多くの機関は、紅麹をサプリメント形状の食品として消費者に売ることに否定的です。

ロバスタチンの医薬品としての販売を認めている米国FDA(食品医薬品局)は2021年、ロバスタチンを含む紅麹サプリメントについて、消費者に購入しないように注意喚起していました。ほかの薬や治療を受けている人たちに深刻な副作用をもたらす恐れがある、としています。ロバスタチン、つまりモナコリンKについて、ヘルスケアのプロフェッショナルの監視下での使用に限られる、と説明しています。