紅麹サプリの機能性成分の本体は医薬品

小林製薬が機能性関与成分とした紅麹ポリケチドは、モナコリンKが見出された紅麹菌とは異なる紅麹菌(Monascus pilosus)で精米を発酵させて作った物質ですが、その作用はモナコリンKによるものと同社が認めています。つまり、これは医薬品相当ではないか? という見方が医薬関係者の間では強いのです。

機能性表示食品制度はガイドラインで、医薬品成分を用いることを事実上、禁止しています。これについて、薬学博士で藤田医科大学名誉教授でもある長村洋一・日本食品安全協会代表理事は、紅麹サプリ問題が起きた後、協会のウェブサイトで緊急に情報発信し、次のように書いています。

「要約すれば健康食品の範疇であるが、有効成分として入っている物質の本体は医薬品である。医薬品が医薬品名で届けたらダメなのに、医薬品を含む総称名なら機能性表示食品の場合OKという事実に私は違和感がある」

同じ成分による作用を活かしているのに、言葉一つで医薬品になったり機能性表示食品になったり。製薬会社でありクスリを用いることの難しさと利点をよくわかっていたはずの小林製薬が、こうした手法を使ってサプリを販売していたこと自体に、医薬関係者は憤っています。でも同社だけの手法ではありません。長村代表理事は「機能性表示食品には同じように医薬品を含んでいて総称名で届け出が受理されている物が他にもある」と書いています。

「根本的に安全性の概念がわかっていない」

健康食品の問題を長年検討し、著書『「健康食品」のことがよくわかる本』(日本評論社)も出版している立命館大客員研究員の畝山智香子さんも、同じ点に注目します。

畝山智香子・立命館大客員研究員。国立医薬品食品衛生研究所の安全情報部長を務め、この春、定年退職した(本人提供)
畝山智香子・立命館大客員研究員。国立医薬品食品衛生研究所の安全情報部長を務め、この春、定年退職した(本人提供)

さらに、医薬品ロバスタチンの海外での処方量が1日10mgであるのに対し、小林製薬がほぼ同じ効果を自認する紅麹ポリケチドの摂取量を1日2mgとして販売していたことを指摘します。「医薬品に近い効果を示す量を含むモノを、食品として売っていたところに、悪質さを感じざるを得ない。根本的に安全性の概念がわかっていない」と批判するのです。

医薬品は、効果を目的に副作用に気をつけながら、量を定めて摂取するものです。要するに、“効くものは危ない”。だからどんな人が、どの程度の量を摂取するか、というのが非常に重要です。

処方薬は、医師が患者の健康状態、疾病の有無などを踏まえて処方し、通常は4週間後に診察し、効果と副作用を確認します。

一方、食品は副作用を覚悟しながら食べるものではありません。食品には多種多様な成分が含まれ、人はそれを全部把握できているわけではありません。加えて食品は、摂取するのかしないのか、摂取する量や期間も、消費者に任されます。