ヨーロッパでも深刻な有害反応が報告された

欧州食品安全機関も2018年、紅麹菌(Monascus purpureus)と米を発酵させた紅麹(red yeast rice)のサプリメントについて、安全性に関する科学的意見書を公表しています。

モナコリンKを中心とする「モナコリン類」を1日に10mg摂取すると重大な安全性の懸念を生じる、と示し、紅麹からのモナコリン類の3mg/日の少量摂取でも、深刻な有害反応の事例が報告されている、としています。症状として、横紋筋融解症、筋骨格系や肝臓への深刻な悪影響などが挙げられています。

そのうえで、食品としての紅麹サプリメントの摂取は、ロバスタチンの治療における摂取量のレベルに容易に至る恐れがあることや、モナコリンK以外に含まれる物質に関するデータがないこと、ほかの食品や医薬品との相互作用に関するデータがないことなど不確実性を挙げ、紅麹からのサプリメントとしてのモナコリン類摂取について、「安全な摂取量を特定することができなかった」と結論づけています。

スイスは「紅麹サプリメントは違法」

ただし、EFSAが調べたサプリ製品と小林製薬の製品の間には違いもあります。EFSAが調べた製品の中には、カビ毒シトリニンが含まれるものがありますが、小林製薬の紅麹サプリはシトリニンが含まれていない、と同社は説明しています。さらに、EFSAが評価した紅麹の菌種と、小林製薬が用いていた菌種が異なることにも注意が必要です。

したがって、EFSAが紅麹サプリの健康への悪影響を指摘していたから、小林製薬の製品もダメだった、とは言えません。

しかし、小林製薬の製品の摂取目安量(モナコリンKの摂取量)が、EFSAの懸念する量に近く、しかも摂取量や摂取期間が消費者任せであったこと、さらに、EFSAがモナコリンK以外のさまざまな物質の影響や医薬品等との相互作用について「不確実性が高い」と判断していた点などについては、今回の問題を考えるうえで無視できない材料です。

ドイツ連邦リスク評価研究所も2020年、EFSAと同様の判断を示し「紅麹を含有するダイエタリーサプリメントを摂取しないよう助言する。どうしても摂取したい場合は、医師と相談後に、または医師の監修のもとで摂取すべきである」としていました。

フランスや台湾もドイツと同様の判断であり、スイスは2014年、紅麹サプリメントは違法である、と示していました。