試験の3カ月前にわかった「惨憺たる文章力」

リビングの机で大きな問題集を広げ、まいにち練習問題を解いていた息子。私は解いた問題の採点をして、間違ったところの解説をする役目だ。しかし小学生向けの試験とはいえどその内容は高度化しており、受験も教育も専門家ではない父としては、わかるところはわかるしわからんところはわからん、といった門外漢の立場だった。

ところが試験も迫る11月、受験勉強が突然、私の専門性に乗り込んできたのである。

子供の第一志望は都立の中高一貫校だった。これらの学校は少し試験が特殊だ。入学試験ではなく適性検査と呼ばれ、国語のみならず理科社会算数まで、すべて記述式で説明するような問題が出る。

通っていた塾の方針もあって直前まで特別な記述問題対策はしていなかったのだが、試験の3カ月前になって初めて過去問を解かせたところ、恐ろしいことが明らかになった。答案を見た塾の先生に「必ず手堅い私立を併願するように」と念押しされるほどの、惨憺たる文章力、説明力だったのである……。

机の上にうつ伏せに横たわっている少年
写真=iStock.com/takasuu
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繰り返すが、試験の3カ月前のことである。万事休す。

しかし、ここで自分のキャリアに救われることになった。長年の新人ライター育成経験から、他人が書いた読みにくい文章を読めば、何が原因でこうなってしまったのかなんとなくわかる。そこで子供が過去に受けた問題の答案をもとに、伝わる文章を書くためのポイントをチェックリスト化した。すると、なんと3カ月後には見違えるような文章を書くようになったのである。

この経験は自分にとっても非常に新鮮で、今までなんとなくやってきた指導を改めて棚卸しする経験となった。

もとは子供用に考えたものではあるが、文章でものごとを説明する上で大事なことが詰まっていると思うのでご紹介したい。「問題」を「質問」に置き換えていただくと大人のみなさんにもしっくりくると思う。

基本的なことも意識しなければ抜けてしまう

「伝わる」文章のためのチェックリスト(説明編)

①きかれたことに答える

もっとも基本のルール。「理由を答えよ」という問題なら答えじゃなくて理由を書くべき。そんなこと知ってるよ! と言われそうだが、実際は説明が入り組んでくると書いているうちにそのことを忘れて説明不十分なまま答えを書いて完了! なんてのもありがち。もっと細かいレベルでいうと、「資料A、B、Cを元に説明せよ」という問題に対してAとCにしか触れていない回答を書くとか。書きながら意識するのはもちろんだが、読み返しの時に最初にチェックしたい。