適当な結論に飛びつくと、心の健康を損なう

明確にわかりようがないことに、私は何も結論を出しません。答えの出しようがないことや不確実なことに対し、そのまま答えのないままにしておく能力を「ネガティブ・ケイパビリティ」と言います。精神科医など精神の安全を専門にする方たちの間では非常に大事な考え方だと知られています。

わからない状態が不安だからと、答えのないことに答えを出してしまうと、短期的には心が落ち着きます。しかし、当然ながらその答えは「間違った認識」なので、現実と自分の認識との間にズレが生じます。答えようのないことに答えを出すクセを付けてしまうと、長い目で見ると、間違った認識が増えに増えて、現実と自分の認識との間のズレが大きくなります。そうなってしまったら、精神的な不安定も大きくなり、自分も周りも苦しめることになります。

もちろんネガティブ・ケイパビリティの大切さはお守りの話に限りません。精神的なことは、何ともあいまいで確実なことは言えない世界です。なのに、とりあえずの適当な結論に飛びつくことは、長い目で見ると、心の健康を損ないます。あえて正解を出すとしたら、あいまいなことは、あいまいな状態が正解なのです。

「吉」や「凶」は何に対する判断なのか

Qおみくじで「凶」が出たら木に結ぶのはどうしてですか?

社寺でおみくじを引いて、「大吉」など結果が良かったら持ち帰り、「凶」のように結果が悪かったら境内の木に結んでいく人が多いですね。別にそんなルールがあるわけではなく、いつの間にか人々の習慣になっています。

初詣でおみくじを結び付ける参拝客
写真=時事通信フォト
初詣でおみくじを結び付ける参拝客=2004年1月2日(神奈川県鎌倉市)

吉凶占いを多少かじった私から見ると、木に結ぶとか結ばないよりも、大事なことがあると申し上げます。

「その吉や凶は一体何に対する判断なのですか?」ということです。

社寺で吉凶占いをするときは、まずおみじくを引く前に参拝して神仏に祈願します。そのときに占いたいことをお伝えします。

例えば、「いま会社勤めですが、来年に起業するつもりです。おみくじで神様のご判断をお示しください」と自分の意志をお伝えします。起業を迷っていてもよいのですが、決めている風にお伝えください。目的は、起業について吉凶を占うことです。

さあ、おみくじを引きましょう。「大吉が出ました!」→「その起業、やるべし!」ということです。おみくじの具体的な中身を読みましょう。そこに細かな注意が書かれています。逆に、悪い結果が出たのなら、「その起業、ちょっと待った!」ということ。シンプルにやらない方がいいなのか、今は準備不足だからもう少し待てなのか、同じ「ちょっと待った」でもニュアンスに違いがあるでしょう。やはりおみくじの具体的な内容で詳細をご確認ください。