ショッピングサイトの「購入ボタン」に隠された意味

インターネット上の市場には、小さなショッピングカートのアイコンが用意されている。そこで私たちは、これはスーパーマーケットでおなじみのあれと同じだと考えやすい。買いたい品物をカートに放り込み、レジへ向かう。オンライン市場は、物理的占有が所有権に直結する世界を注意深く真似て作られており、占有がもたらす愛着を誘発するようにできている。これにだまされてはならない。

最近行われた調査によると、回答者の83%は、デジタルコンテンツを物理的なモノと同じように所有していると考え、自分の好きなように扱ってよいと誤解しているという。友達に貸してもいいし、何度でも好きなだけ使えるし、売っても寄付してもいい。あるいは切り貼りしたり他のものと組み合わせたりして、マッシュアップの楽曲やコラージュを制作してもいいのだ、と。

この調査を実施した研究者はこう述べている。「ウェブ上の購入(buy)ボタンにはいろいろな意味が込められている。“貸す”とも“条件付きアクセスを提供する”とも言わずに“買う”としてはあるものの、その意味は消費者の大半にとって非常に特殊であり、デジタルコンテンツの場合には通常の“買う”は当てはまらない」。

購入ボタン
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オンラインでは「占有」は意味をなさない

ほとんどの場合、デジタル作品を再使用・転売・寄付・改変することには厳しい制限がついている。オン/オフ・スイッチはデジタルの世界には持ち込まれていない。自分のものとして占有するというあのおなじみの象徴的行為は、オンラインでは意味をなさない。

むしろ占有は、消えゆくシステムの名残りというべきだろう。私たちはこの新しい現実に直面せざるを得ない。買うか借りるかという古くからある選択とはまた違い、オンラインでの所有はもっと奇妙に感じられる。すでに述べたように、スイッチではなく、むしろ調光ダイヤルや音量調節つまみのような調整ダイヤルのイメージだ。

インターネット経済はイノベーションに満ちているとよく表現され、「前例のない」とか「比類のない」といった形容詞がひんぱんに使われる。となると、バーチャル経済は人類の歴史においてまったく新しいものだとつい考えやすい。たしかにそういう面はある。だが所有権に関する限り、さして目新しいとは言えない。