アマゾンで電子書籍を購入したとき、所有権は誰のものになるのか。コロンビア大学のマイケル・ヘラー教授とカリフォルニア大学のジェームズ・ザルツマン教授は「サイト上では『購入』となっているが、実際は購入ではない。実際はAmazonからほんのわずかな権利が分け与えられただけだ」という――。

※本稿は、マイケル・ヘラー、ジェームズ・ザルツマン『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』(早川書房)の一部を再編集したものです。

電子書籍とハードカバーの本
写真=iStock.com/Liudmila Chernetska
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デジタルコンテンツは誰のものか

デジタルの世界と自然界には共通点が数多くある。どちらも所有権がないというベースラインからスタートした。誰も所有していないということは、新しく出現した資源の特徴である。その資源を所有しようとする競争が始まった瞬間から、所有権をどう設定するかという問題が生じる。どの所有権ルールが最も効率的だろうか。最も公平だろうか。最も自由裁量の余地を広げ持続可能性を確保できるだろうか。

まったく同じ問いに、いま私たちはデジタルの世界で直面している。ただし自然界の資源とバーチャルの資源の間には重要な違いがある。これまでのところ、各国政府はデジタルの所有権に関して主導権を握ろうとはしていない。本来はそうすべきなのだろうが、いまのところは介入していない。

企業が自分たちに都合のいいルールを作っている

デジタルの世界で所有権の最前線に立っているのは企業である。彼らは戦略的あいまいさといったツールを駆使し、ベースラインを定め、オプトイン/オプトアウトを設定する。何かをしようと決めたら、企業は法律ができるのを待ったりいちいち許可を申請したりはしない。彼らが突然新しいルールを持ち出してきたときには、公共の目的に寄与するのではなく、必ず彼ら自身の利益が最大化されるようになっている。