住宅ローンは強制積み立ての個人年金のようなもの

住宅ローンの滞納率は公表されているデータがほとんど無いが、地方銀行の住宅ローンの保証を担っている全国保証の2023年度統合報告書によれば、保証債務残高15兆9449億円に対して、延滞金額は225億となっており、保証債務残高に対する比率は0.14%となっている。またデフォルト率は0.23%と記載されていることからも、住宅ローンの滞納率は相当低いことがわかる。

住宅ローンの滞納率が低いのは、貸し手である銀行が審査の結果、この人なら貸しても滞納しないだろうと判断していることに加え、せっかくの持ち家を失わないために生活費を削ってでも住宅ローンを払おうと多くの人が考えていることが背景にあるだろう。

そして、例えば夫35歳、妻30歳の時に35年ローンを組んだとして、ローン完済時の年齢は夫70歳、妻65歳となる。

厚生労働省の令和4年簡易生命表によれば、男性70歳の平均余命は約16年、女性65歳の平均余命は約24年となっている。

一生懸命返済した住宅ローンはいわば強制積み立ての個人年金のようなもので、住宅ローン完済後に夫は約16年、妻や約24年の間、配当として家賃なしの家に住めることになる。

住宅ローンについて話し合う夫婦と2人の子ども
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平均所得は下がっているが、個々人の給料は上がっている

そうはいっても、平均給与はどんどん下がっているというし、住宅ローンを借りるなんて返せるかどうか不安だという人も多いと思う。

国税庁の民間給与実態統計調査の総括表を見ると令和4年(2022年)の平均給与は458万円で、ピークだった平成9年(1997年)の467万円よりも下がっているが、約9万円、約2%下落したにすぎない。これは主に給与が下がる定年後の再雇用や非正規雇用が増えたことが要因だろう(正社員の絶対数は多少増減しているがほぼ一定で推移している)。

しかし、個々人の給与と平均は大きく食い違う。それは日本企業の給与体系がまだまだ年功序列であることが背景にある。

実際、賃金構造基本統計調査の長期時系列データでは、25~29歳の平均年収は1999年に390万円だったものが、2019年には419万円と増加しており、45~49歳の年収も1999年の603万円が2019年には616万円に増加している。

約25年前の1999年に25歳だった人は、2019年には45歳になっているわけで、年収でみると390万円が616万円と約1.6倍になっていることになる。もちろん、企業規模や雇用形態、職種や業種等によって水準は異なるが、一人一人の個人でみれば、年齢が上がったことで給料は大きく増えていることが多いのだ。

さらに、内閣府の「男女共同参画白書令和4年版」によれば、共働き世帯は2001年から2021年までで約1.5倍になっており、夫婦のいる世帯全体の約7割に達している。その結果、2017年の就業構造基本調査の結果では、東京都の共働き世帯年収の最頻値は1000万以上1200万円未満となっておりその比率は16%となっている。

個人でみても世帯でみても、高齢者以外の所得は下がっているどころか上がっているのだ。