持ち家とは自分を顧客とした最も確実性の高い賃貸事業
持ち家の住宅ローン金利は低いし、固定資産税も相続税も優遇されていて、住宅ローン減税まである。普通の賃貸住宅事業にはこうした優遇はないから基礎的な条件で持ち家のほうが有利で、しかも持ち家は入居者の入れ替わりがないから募集のためのコストや入居者入れ替わりのたびに発生するリフォーム等のコストも管理コストもなければ、家賃滞納のリスクも孤独死のリスクもない。
賃貸は固定資産税も払わなくて良いし、エアコンが壊れてもそれは家主の負担だという言う人もいるが、それはそういった名目で請求されないだけで、家賃にはそうしたコストがちゃんとはいっている。
こうしたことを考えれば、原理的に賃貸のほうが持ち家よりも経済的に有利になるということはあり得ない。唯一の例外は公営住宅だが、公営住宅は家賃を安くするために税金が投入されている。簡単に言えば、公営住宅は行政が赤字で貸しているということで、これは所得の再配分という目的があり、だからこそ所得制限があるわけだ。
つまり、持ち家とは自分自身に家を貸しているという非常に安全性の高い賃貸事業なのだ。
住宅ローン「返済期間は長く、返済額は低く」
持ち家は多くの場合住宅ローンを借りるが、お金を借りるということも個々人の立派な能力の一つだ。語学が堪能、プログラミングができる、営業力がある、スポーツが得意、といった個人の能力と同列にあるものであり、だとしたらその能力を生かさない手はない。
お金を借りる能力を最大限に発揮するのは、住宅ローンを借りられるだけ借りて、できるだけ返済期間を長くする場合になる。返済期間を長くすることは住宅ローンの毎月返済額を低くすることにつながり、失業したり収入が減少したりした時に返済できなくなるリスクを小さくする。
よく、返済総額を抑えるために、借入期間をできるだけ短くしよう、繰り上げ返済時には返済期間を短縮しようという話を聞くが、それは返済総額を抑えるために、返済できなくなるリスクを高めている、という側面が考慮されていない。
そもそも返済総額は、当初契約の借入期間で決まるのではなく、最終的な返済期間で決まる。そして、繰り上げ返済したとしても、返済期間を変えなければ当然毎月返済額は減り、それだけリスクも減り、繰り上げ返済の余力も高まっていく。
ただし、国の借金が1000兆円を超え、消費者物価指数よりも金利を常に低くすることで借金を実質的に減らしていく金融抑圧策が続くことを前提に考えれば、繰り上げ返済はせず、余裕資金は株や現物資産のようなインフレヘッジする資産に振り向けておくことも検討するべきだろう。