トクホだったら到底認められない内容だった

さすがにこれではエビデンスとして不足していると同社も考えたのか、安全性評価シートには、マウスに大量に投与した急性経口毒性試験や、ラット90日間反復投与毒性試験、遺伝毒性を調べた試験、ヒトでの臨床試験の結果が記載されていました。

しかし、これらの試験に用いた動物の数や、投与する量の設定などは、OECD(経済協力開発機関)が定めたテストガイドラインから大きく逸脱しており、信頼度の低い試験でした。ヒト試験も行われていますが、被験者数は少なく参考程度にしかなりません。

結局のところ、もし同じデータがトクホや農薬・食品添加物等の審査に出されていたら、安全だとは到底認められないような内容しか、提示されていませんでした。

ちなみに、海外にもこうした機能性表示の制度があります。米国の「ダイエタリーサプリメント」制度は緩くてサプリメント天国になっている、とよく言われますが、安全性については実は、日本よりもかなり厳しい制度になっています。1994年10月15日以前に使用歴がない新規食品成分(new dietary ingredient:NDI)についてはとくに厳しいのです。

日本の安全性チェックは著しく不足している

食品医薬品局(FDA)の文書は、少なくとも25年にわたって広く安全に食べられてきた、ということを「食経験」としています。さらに、安全な食経験があったとしても、摂取頻度や期間、摂取量が多くなったりする場合については、動物への90日間投与試験や生殖・発達毒性、1年間慢性毒性または2年間発がん性、体内動態などを調べる試験の実施が求められています。当然、OECDのテストガイドラインに沿うように推奨されています。

EUも、1997年5月15日より前に、EU域内で食経験がない食品を新規食品(Novel Food)とみなして、認可制度としています。食べられてきたものでも、抽出や濃縮などが行われている場合は新規食品とみなされ、審査が必要。EU域外で食べられてきた食品については、少なくとも25年の食経験を求めています。

いずれにせよ、欧米ではサプリメントとしての販売歴など、食経験としては認められません。

日本はそもそも、機能性表示食品に限らず一般の新規食品についても、国の審査がなく、安全性の確認や販売の開始が企業の自主的な判断に任されています。人々が食べ始めてもし問題が生じれば、食品衛生法違反に問う、という事後処理型の食品衛生行政です。

新規性が問われ、機能性を追求し、摂取量が多くなりがちな健康食品である「機能性表示食品制度」においても、欧米に比べて安全性の確認は著しく不足していたのです。